君は LOVE ME TENDER を聴いたか? [music]
If it's fine rain or shine I don't mind I'll take it anyway
仕事でもプライベートでも,様々な「やること」がありますよね.これらをきちんとこなせるかどうかは,意志が強い・弱いということよりも,「こなし方のスキル」を知っているかどうかに寄るところが大きいのではないでしょうか.
私自身,もう8年ぐらい GTD を実践していますが,知れば知るほど奥が深く,いまだに新しい発見があるのが GTD です.今回は,そんな GTD の私的メモを綴ってみたいと思います.
【GTD とは?】
"Getting Things Done" の略で,デビッド・アレンが提唱する,「やることをこなす」為のテクノロジーです.ハッカー文化におけるライフハックの1つとされ,仕事が複雑化し割り込みが多い近年の頭脳労働者には適さないという理由から,優先順位や計画を強調する従来のタイムマネジメント手法を否定しています.
頭の中で「やるべきこと」を考えないのが要点であり,アレンの言葉を借りれば,
頭は,クリエイティブなアイデアを創造する為にある.
それらを管理・蓄積する為ではない.
ということ.「あれもしなくちゃ」「これもしなくちゃ」という焦りを頭の中で空回りさせるのではなく,いかに素早く「やること」を頭の外に追い出し,自動運転させるかに主眼を置いたテクニックです.
【GTD を簡単に紹介】
とても「簡単に紹介」できるものではありませんが,少しだけ解説してみます.
GTD では,
1. Capture (収集)
2. Clarify (処理)
3. Organize (整理)
4. Reflect (レビュー)
5. Engage (実行)
のステップで,「頭のモヤモヤ (Stuff)」を扱います.
多くの人が非効率な処理をしてしまっているのは,この5つのステップを混同し,いくつかを同時にやろうとしている為 (特に「収集」しながら同時に「処理」「整理」しようとしている),あるいは5つのステップを全て同じ方法やツールで行わなければいけない思っている為,と説いています.
第1ステップの Capture (収集) では,素早く「モヤモヤ」を頭の外の「インボックス」に追い出します.その為には,それを可能とし,信頼できるツールを確立すること (別に紙とペンだって良い),またその過程で処理や整理を同時にやろうとしないこと.
第2ステップの Clarify (「処理」と訳されていますが個人的には「明確化」の方が適切だと思います) では,体裁を考えず素早く収集した「モヤモヤ」について,その正体は何なのか,本当にやるべきことなのかどうか,明確にします.
留意点は3つ.
- いちばん上のものから処理していく (優先度を否定)
- 一度に1件ずつやる (マルチタスクを否定)
- インボックスに戻さない
下のフローチャートでもう少し詳しく説明します.
第3ステップの Organize (整理) では,第2ステップで明確になった「やること」を整理します.シチュエーションごとに整理するのが秘訣で,例えば「仕事」「プライベート」というカテゴリーで整理するのではなく,「自宅」「職場」といったコンテキストで整理するのです (職場でプライベートのことを処理した方が良い場合もあるでしょうし,自宅にいる時は「職場タスク」は全て無視できる).
こちらも下のフローチャートでもう少し詳しく説明します.
第4ステップの Reflect (和訳の「レビュー」では意味が軽すぎる.「向き合い」や「自己との対話」というニュアンスでしょう) では,「何も見落としていない」という自己への自信を持ち,システムを更新します.
第5ステップは Engage です (この「実行」という和訳は完全に間違い.後述します).実は第1-4ステップは,壮大なネタ振りであり,第5ステップでは「直感を信じてやるだけ」とアレンは言っています.第4ステップまでを正しく実行してきたのであれば,自分の直感に自信を持つことができるはずだと.
ここで有名な,GTD フローチャートを紹介します.
「頭のモヤモヤ (Stuff)」に対して,まず「アクションを起こせるかどうか」を考えます."Maybe" は "No" です.
No であれば,Trash (捨てる,忘れてしまう),Someday/maybe (いつかやる/多分やる),Reference (行動が伴うものではなく,必要な時に参照するような情報だった) のどれかに分類します.重要なのは,勇気をもって捨てること.及び,「いつかやる/多分やる」は「後で考える」とは違うことです (後者はただの先延ばしです).
この後 Yes に進むのは全て「アクションを起こせるもの」ということになりますが,次に,その対象に対する「最初に取るべき行動 (Very next action) は何か」を考えます.そしてその最初に取るべき行動1つで,その対象をコンプリートできるかどうかを考えます.
No であれば複数のアクションを要するということなので,それは「プロジェクト」として別途定義します.
Yes であれば,「2分以内に終わるかどうか」を考えます.Yes であれば,何も考えずにすぐその場で実行.
No であれば,「自分がやるのが一番適切かどうか」を考え,No であれば適切な人に渡して「ウェイティングリスト」に載せます.
Yes であれば,特定の日付にやるものかどうかを考え,Yes であればカレンダーに載せてその日まで気にしない.No であれば,シチュエーションごとに,例えば @職場,@自宅,@PC,@電話 といった具合で整理します.
もしこのエントリーで,1つだけ覚えるとしたら,ぜひ 2-minute rule を覚えて実践して下さい.「2分以内に終わることは,あれこれ考えずにすぐその場で実行」を心掛けるだけで,世界が変わります.2分でいかに多くのことが終わるか,驚くことになるでしょう.
【GTD のポイントと本質】
私が考える,GTD の2つのポイントと,1つの本質を述べます.
ポイントの1つは,フローチャートの中にある Trash,すなわち勇気を持って捨てることです.私達は,必要以上に多くの「やるべきこと」を自分に課しているのではないでしょうか.
フローチャートの最初のステップは,「アクションを起こせるかどうかを考える」でしたが,アクションを「起こすべきかどうか」「起こさなくても困らないか」ぐらいで考えても良いかもしれません.
「どれぐらい捨てるべきか」は人によって当然違うでしょうが,ここではあえて定量的に,「8割を捨てる」ぐらいの気構えを持ってみてはどうでしょうか.頭の中を駆け巡る「モヤモヤ」のうち,本当に重要なことって2割ぐらいだろ.
もう1つのポイントは,next action の考え方.それは本当に,目的に近づく為に適切な next action でしょうか? 例えばアレンは,会社で何かを決める必要があった時に,「決める為のミーティングを設定する」は next action ではないと明言しています.
そして私が考える,GTD の最大の本質は,第5ステップの "Engage" にあります.「実行」と訳されてしまっていますが,engage とは本来,「愛着」「約束」「思い入れ」「絆」「繋がり」のような意味です.婚約するという意味もあるので,要はそれぐらいの愛情と約束を誓う言葉であると解釈して下さい.
GTD を「生産性アップ」というキーワードで語る人もいますが,個人的には「仕事,大切な人,健康などといったものに,engage する手法」だと捉えています.
GTD が,ただの効率化手法であれば,私はここまで陶酔していないでしょう.と言うか,計画通りにモノゴトが終わったからといって,一体どんな良いことがあるというのだ.くだらない.むしろ私は,計画的な人生など,大嫌いである.
例えば子供と遊んでいる時に,「オムツが少なくなってきたんだった,買いに行かなきゃ」とか,「来週には入園式だからあれとこれを準備して…」などと思い出すと,「ああ,私って子供のことを良く気にかける親だ」という実感を持つかもしれませんが,それは錯覚です.子供のことではなく,やることを気にかけているだけだからです.子供の為には,純粋に子供と遊んでいる時間に engage することが一番であり,GTD はそれを可能にする手法なのです.
アレンが,lynda.com のインタビューで語っていた内容です.
Getting Things Done (GTD) は,getting things done (モノゴトを終えること) のことではない.あなたの大切なものに,適切に engage することである.
"Engage" とは,ハードワークをすることではない.時には,ただ座って瞑想し,自分と向き合うことも engage かもしれない.頭の中が心配事だらけでは,そんなピースフルな瞑想をすることも難しいだろう.
「やるべきこと」から自由になり,クルーズコントロール (自動運転) させよう.頭の中が空になれば,あなたは直感を信じることができるようになる.
頭の中の空いたスペースは,クリエイティブな創造に,あなたの人生にとって本当に大切なことを考えることに,あなたの愛する人を考えることに,使おう.それらと接している時に,うわの空になるのではなく,engage しよう.
【もう少し詳しく知りたければ】
本質は上に述べた通りですが,実際のやり方については,この辺りが分かりやすいでしょうか.
GTD歴6年目の私が、これ以上ないくらい丁寧に解説します【総括】
生産性アップの金字塔「GTD」の理念をおさらい
【翻訳】15分で分かるGTD – 仕事を成し遂げる技術の実用的ガイド
【さらに詳しく知りたければ】
やはりデビッド・アレン自身による本を読まれるのが一番です.
はじめてのGTD ストレスフリーの整理術 デビッド・アレン |
ひとつ上のGTD ストレスフリーの整理術 実践編――仕事というゲームと人生というビジネスに勝利する方法 デビッド・アレン |
ストレスフリーの仕事術―仕事と人生をコントロールする52の法則 デビッド アレン |
最初に結論を書いておくと,私は,全ての人が株で儲けることを考える必要はないと思いますが,全ての人が資産運用を考えるべきだとは思います.
ここで1つ問題です.
あなたの手元に100万円あったとします.あなたは,この100万円を,家の金庫にしまっておきました.10年後,この100万円は,いくらになっているでしょうか? (金利はここでは考えません)
答えは,必ずしも100万円ではありません.
物理的には当然100万円ですが,価値としては100万円かどうか分からないのです.
今日,キャベツが1玉1万円だと仮定すると,100万円で100玉買えます.10年後,インフレによりキャベツが1玉2万円になっていれば100万円で50玉 (今日の価値で50万円).デフレにより1玉5千円になっていれば100万円で200玉 (今日の価値で200万円).
つまり10年後の物価が今日とまったく同じでない限り,この100万円の価値は,100万円ではないのです.例え物価が変わらなくても,最近で言えば消費税の引き上げは実質的な物価上昇ですし,資産を「日本円」でしか保有していない人は,昨今の円安で被害を被っているわけです.
もちろん上記は,話を極端に単純化した例え話です.
この100万円は実際のあなたの資産,キャベツはあなたの子供が大学に行く時の入学金などに,置き換えて下さい.
ですので,少なくとも景気に沿った資産運用は全ての人が選択肢として持ち,その為の基礎知識は身に付けておくべきだと考えるのです.
以上を踏まえて,本を3冊紹介します.
この順番で読まれることをお勧めします.
経済ってそういうことだったのか会議 (日経ビジネス人文庫) 佐藤 雅彦・竹中 平蔵 |
「お金の正体」「株」「税金」といった基本的な概念からはじまり,「アメリカ経済」「円・ドル・ユーロ」「アジア経済」といった話に発展し,終盤では「投資と消費」「起業とビジネス」「労働と失業」といったところにまで踏み込んでいます.
(中略)
好むと好まざるとに関わらず,我々の生活は,経済の仕組みの上に成り立っています.
もちろん経済のことが分かったからといって生活が向上する保証などありませんが,何か得体の知れないモノが生活の基盤としてあるよりは,納得感をもって毎日を送ることができるでしょう.
なぜ投資のプロはサルに負けるのか?― あるいは、お金持ちになれるたったひとつのクールなやり方 藤沢 数希 |
内藤忍の資産設計塾【第4版】 (豊かな人生に必要なお金を手に入れる方法) 内藤 忍 |
もう今から8年も前のエントリーですが,当時読んだ時から今まで,そしてきっとこれからも,心に強く残っている言葉があります.小飼 弾さんの,こんな一言です.
私自信、新しいプログラミング言語を3日でマスターできなかったら負けだと思っている。
404 Blog Not Found:書評 - 受験勉強は役に立つ
例えば有名大学を出ているからといって,社会に出てからも優秀とは限りません.受験勉強と違い,社会に出てからは,時間をかけて行う暗記や知識量に価値はないからです.
また,学生の頃は,10問中9問正解すれば90点が取れますが,社会ではその逃した1問のせいで,ビジネスが破綻することもあります.
社会に出てから解くテストとは,
ここに100問から成るテストがあります.1問にかかる時間は1分,但し制限時間は40分です.つまり与えられた時間全てを問題解決に費やしても,解けるのは最大40問です.
配点はバラバラで,1問1点の設問もあれば,1問10点の設問もあります.さらに100問のうち3問はマスト問題で,これらには全て答えなければいけません.マスト問題を1問でも逃すと自動的に0点になります.
設問の配点と,どれがマスト問題なのかは事前に知らされていません.制限時間のうち適切な割合を使って,適切なプロセスでそれらを見極めて下さい.
…みたいなものではないでしょうか.
技術やトレンドの移り変わりが激しい昨今,「知らない」ということは理由にならず,むしろ知っていることは古いことであり,知らないことをいかに早くマスターするか,いかに早く入力しつつ整理された状態で出力するか,みたいなことが重要です.
ここで,ラーニング・カーブ (習熟曲線) というものを考えてみます.
何か新しいことをマスターする際,時間と共に習熟度は上がっていくとしましょう.
実際には上のような単純な直線ではなくて,最初は立ち上がりが遅く,その後に成長が加速し,ある程度の所で鈍る,という「S字カーブ」のような曲線の方が,現実に即しているかもしれません.
ここまでが一般的に言われるラーニング・カーブです.
さてこの後はどうでしょうか.
成長が鈍ると,いわゆる「壁」にぶち当たることになります (下図 ★a).
ぶち当たった壁は,見方を変えれば,成長の機会 (learning opportunity) です.ここで手を抜かずに,必死に勉強するとか,例え相手が年下でも余計な恥やプライドを持たずに教えを乞うとか,不恰好にもがいてでも何とかくらいついて成長機会をモノにすれば,一時的には落ち込んでも,またS字カーブの成長サイクルに突入できる.この繰り返しが,ラーニング・カーブの本質ではないでしょうか.
惰性で仕事をしている為にこの成長機会 (★a) に気付かない,あるいは気付いているのに,壁から逃げたり手を抜いたりしていると,例えその次の成長機会 (★b) をモノにしたとしても,最初の成長機会を乗り越えた人 (点線) と比べて,p の分だけ差がついてしまう.
10年,20年というスパンで考えれば,この差の積み重ねは,歴然となっていきます.
そして成長機会を逃さず,自己投資を重ねて,社会に出てからの勉強のやり方を肌感覚として身につけた人にこそ,「新しい技術を3日でマスターできなかったら負け」と,サラっと言えてしまうのだと思います.
ずっと自分の得意分野だけで仕事ができることはなく,常に新しいことを吸収する必要がある.
その時に「あれもこれも,覚えることが沢山あって大変!」…ではなく,まだ自分が知らないスキルを覚える前から,それは完全に体得できる前提で,それをどう使うかに最初から頭が切り替わっている.優秀な人とは,そんな人だと思います.
この季節になると思い出しますが,ちょうど2年前の今頃に転職を決意し,その2ヶ月後には現在の会社でのキャリアをスタートすることになります.この2年間,様々な新しいチャレンジがありましたが,冒頭の弾さんの言葉は,1つの拠り所だったように思います.
新しいこと,知らないことは,理由にならない.
壁にぶち当たったらチャンスと捉え,成長機会を逃さないようにと,改めて自身に言い聞かせると共に,これからもリミットをかけずに,新しい領域にチャレンジしていく所存です.