第5回目を迎えた,スマホデザイン会議に参加してきました.今回は,「UI/UX ここだけの話 大放出」というテーマです.
スマホデザイン忘年会議2012 on everevo
そこで今回は、年末ということもあり「スマホデザイン忘年会議」と題して、今まで皆様より質問の多かった下記のような疑問について、ここだけでしかできない、施策・失敗例・成功例・数字などの実例を交えながらトコトン掘り下げていきます!
KPIってどの数字を取ってるの?
UIってどう設計して、どう改善してるの?
UXの評価ってどうするの?デザインvs機能 どっちが大切?
どうしたらワクワクするデザインにできるの?
ユーザーの声はどういった基準でデザインに反映するの?
UCDの実施は具体的にどうするの?
PCとの違いって?スマホだからできることって?
以下,メモです.
【fladdict 流の UI デザイン】
by Art & Mobile 深津貴之氏 (
@fladdict)
発表資料
iPhoneアプリ設計の極意 の巻末付録に寄稿した,「fladdict 流の UI デザイン」の内容をブレイクダウンして説明.
- コアコンセプトを最初に決める
- 誰が
- 何を
- いつ
- どう
- 複雑な機能を全てスマホに盛り込むことはできない
- 何を取って何を捨てるか,が重要
- 90%のユーザーが必要なことを考える
→ コア機能を抽出する
- 4つの UI パターンから選ぶ
- ユーティリティ型
- ナビゲーション型
- タブ型
- 没入型
→ ペーパープロトで全パターン試して,問題を予見する
→ 最初に間違えると,その後ブラッシュアップしても使いやすくならない
- ここまでは広く浅く,パターンが決まったら狭く深く
- 問題と原因を網羅するには,フィッシュボーン図を使う
- 曖昧な問題を,複数の具体的な問題に分割する
- プロトを繰り返し,フィッシュボーンで洗練させてから,ビジュアルデザイン
- 拡張性
- 初期バージョンで,ボタンを詰め込みすぎない
- 将来,機能がいくつか追加されることを前提に
- 機能を増やして,使いにくくなったら意味がない
- PDCA サイクル
- Plan
- Do
- Check
- Action
→ これをきちんと回さないと,誰も使わない,あるいはクライアントしか喜ばないアプリになる
- まとめ
- 常に立ち返る所 (コアコンセプト) を最初に決める
- 初期に可能性をしらみ潰す
- プロトタイピングを何度も繰り返す
- ここまでやれば,実装は機械作業
所感:
数々のヒットアプリを手掛ける fladdict さんだけあって,説得力があり,内容も具体的.とにかく,この一言に尽きます.
【これからの Lean UX の話をしよう】
by 利用品質ラボ 樽本徹也氏
発表資料
- もしせっかく作った製品が売れなかったら?
- 「企画や営業,開発などを強化しなければ」という流れになる
- 組織がどんどん太っていく
→ そこで Lean (贅肉・無駄がない)
- 製品開発における最大の「無駄」とは?
- 誰も使わないものを作ること
- 良い製品は良いアイデアから生まれる?
- アイデアは仮説に過ぎない
- 検証していない仮説は単なる「思い込み」に過ぎない
- 検証のプロセス
- 課題検証
- ソリューション検証
- 製品検証
- 市場検証
- Problem Interview
- Early adapter の把握
- Must-have problem の把握
- 既存代替策・既存製品の把握
- Solution Interview
- MVP (Minimum Viable Product) の要件定義
- ユーザーは MVP をいくらで買ってくれるか,という価格
- 持続可能なビジネスモデル
- 「設計・開発」は,ここからの作業
→ 以上のことは,企画レベルで終えてなければならない
- MVP Interview
→ ユーザーテスト
- メトリクス
- 総ユーザー数
- アクティベート数
- 再利用ユーザー数
- 有料会員ユーザー数
- バイラルしてくれたユーザー数
- 会議室で議論しててもダメ,実際のユーザーに触れよ
所感:
アプリ開発に対する「心構え」みたいなものが聞けました.経営陣にも聞かせたい内容.
特にこの一言は心に響きました.
【Android における UI/UX】
by AKQA 佐藤伸哉氏
発表資料
- UI パターンを知り,Android らしい UI を作る
- Android Design で定義された,アプリの階層構造
- Top level views
- Category views
- Detail/edit view
→ 極力シンプルに,深い構造を作らない
- 階層構造のより分かり易い考え方
- 第1階層 (Action Bar = トップレベルの選択階層)
- 第2階層 (Tab など,カテゴリレベルの選択 = 選択された情報の階層)
- コンテンツ
- 具体的に実装した例
- Google Maps, Gmail
→ 一番参考にすると良いアプリ
- 階層構造を使い易くするコツは Action Bar
- トップレベルの定番パターン
- Tab Nav. (Scrollable Tab)
- Pull-down Nav. (Spinners)
- Drawer Nav. (Drawer)
- コンテンツレベル,情報の表示の定番パターン
- Visual View
- Content View
- Content detail View
- Thumb-Nail List View
- Simple List View
- Split View
- コンテンツレベル,情報のアクションの定番パターン
- Bottom Action
- Pull-down Action
- コンテンツレベル,情報の編集の定番パターン
- Edit First
- Edit Last
- 以上13パターンを組み合わせて作るのが Android アプリの基本
所感:
基本的な内容に終始したのが残念ですね.佐藤氏にしかできない話をしてほしかった.
【トークセッション】
by TechWave 副編集長 増田真樹氏 x ゲストスピーカー3名
(増田)
ステートメントのまとめ方は?
使われるものを見出し,市場に受け入れられる企画に落とす際に必要な,情報やプロセスは?
(深津)
Amazon は最初にプレスリリースから書き,それが魅力的だと思えたら開発に着手するのだとか.それはアプリ開発にも使える.自分の場合は,100字以内にまとめる.100字にまとまらないなら,要件がまだ曖昧なのでアプリを作る段階ではないと考えている.
(佐藤)
他との差別要因を明確にする.競合と何が違うのか,ユーザーにどんなメリットがあるのか,を考える.「最終的にこれは何なの?」というのを,最初に考える.
(樽本)
逆に,ステートメントを定義しないで,どうやって作るの?
アイデアは,自分やユーザーをよく観察して,なにを不便に感じているかを捉えるところから出てくる (ジョブズみたいに「降りてくる」人もいるだろうけどw).ユーザー調査やグループインタビューからは,アイデアは出てこない.実際にユーザーを見ないとダメ.
(増田)
ステートメントがまとまったとして,それの交渉の仕方は? クライアントの落とし方,妥協の仕方.
(深津)
僕のやり方はかなりイレギュラーですけど…
初回に,全画面遷移を書いて見せてしまう.その時点で企画書は無力化し,自分が主導権を取れる.それで最後にはこっそり画面遷移が変わってるw
(佐藤)
企画が通せないということは,相手が理解できていないということ.イコール,自分も分かっていないのでは? 努力が足りないだけだと思う.
(樽本)
「チームをまとめる一番良い方法は」と質問を置きかえて答えると,全員ユーザーに会わせること.エンジニアもデザイナーもマネージャーも.
(増田)
ユーザーテストはどのようにやっている?
(深津)
僕は1人でやっているので…予算やリソースがある時はちゃんとやるけど,そうじゃない時は以下の2つの方法.
バーで酒を飲みながら自分のアプリを最後まで説明できるか.自分のオカンが使えるか.
(樽本)
会社内だったら,開発部門以外の人間にちょっと使ってもらう,ぐらいでもかなりのことが分かるはず.
カメラでテスターを撮影するような,ちゃんとしたテストをする時は,必ずテスターの指を撮ること.指は口ほどにモノを言う.
(増田)
機能の削り方,改善の仕方は?
(深津)
機能の向上と利便性は比例しない.それをいかに自分で肌感覚で持ち,相手に肌感覚として持ってもらうか.自分で作っているアプリなら,1週間使わない機能は削っていく.クライアントがいる場合は,プレゼン芸などで無理矢理納得してもらう.「iPhone も最初はコピペがなかった」と言ったり「100徳ナイフ」の画像を見せたり.
意思決定もコスト.選択肢が多いということは,それだけコストがかかる.それを意識しないといけない.
(増田)
素敵なスマホ UI デザインについては,どう考える?
(佐藤)
HTML5 か Native か,で言えば,Native.
Native じゃないとハードウェアが持っている性能を発揮できない.
(深津)
素敵な UI とは,使っている時に,状況とか世界とかを,自分がコントロールしている感覚があるもの.因果関係がしっかりしているというか.
押したいところにボタンがある,消したい時に消せる,みたいな.
(樽本)
まずアプリは役に立たないとダメ.実用性ではなく,その人を喜ばせる,という意味で.
(会場)
アプリのアクセス解析ツールについてはどう考えているか?
(佐藤)
必要ないと思う.
(深津)
アプリに埋め込んだことはあるが,ユーザーの顔を見なくなってしまう.10万ダウンロード以下のアプリには必要ないと思う.
(樽本)
監視するのもいいが,数字が悪化したした時に行動が取れるようにしておく (実ユーザーにアクセスできるとか) の方が大切.
(会場)
お3方が,自分のアプリ以外で,一番好きなアプリは?
(深津)
Paper.
似たようなアプリを作っていたが,Paper で満足して開発をやめてしまった.
(佐藤)
Gmail と Simeji.
(樽本)
MUJI NOTE とか iBooks とか.
発表者,及びスタッフの皆さん,素晴らしいセッションをありがとうございました.