New game, new rules - 転職します [reflection]
大学を卒業してから15年 (正確には14年9ヶ月) 働いた会社を辞めます.退職日は6月中旬,5月末を最終出社日として,来週から折を見て有給休暇を消化していきます.
入社した頃のことが思い出されます.高校・大学とアメリカで過ごした私にとって,帰国して日本の会社で働くというのは,それなりに抵抗がありました.今思えばただのステレオタイプなんですが,「日本社会は窮屈なんじゃないかな」とか,「人間関係がめんどくさいんじゃないかな」とか,「年功序列が蔓延ってて理不尽なことばかりなんじゃないかな」とかとか.
実際入ってみると,まったくそんなことはありませ いや,そりゃちょっとはあったけどさ.でも,なにより仕事がおもしろかったし,同僚もいい連中ばかりだったし,同期が最高だった.会社ってこんなに居心地がいい場所なのかと思ったのを覚えています.
「学生時代ずっとアメリカにいたから,2-3年日本で働くのもいっかなー.そしたらまたアメリカに戻ろう」ぐらいに思っていたのが,気づけば15年も経っていたのは,偏に楽しかったからだし,この会社が好きだったんだと思います.
定期的な実力診断 (転職活動) や,社外の方々との交流を通して,自分の市場価値は把握してきたつもりですが,この会社での仕事内容,得られる喜び,待遇,ポジション…などを総合的に考えると,これまで,他へ動く理由はありませんでした.
好きなことを好きなだけやらせてもらってきたし,自分のコードやアイデアが入ったプロダクトが世界中に出荷され,店頭に並べられているのを実際にこの目で見るというゾクゾク感を,存分に味わってきました.
世間的には,この会社は迷走している,なんて言われて久しいけど,15年もいればいい時も悪い時もあったよ? 最近ちょっと業績が悪いから他に乗り換えようなんて軽い気持ちではないし,むしろ悪い時は逆にチャンスと思うようにして,「自分が何とかしてやろう」という気持ちでやってきました.頭にくることや納得できないことも山ほどあったけど,それはどこで何をしてたってあるだろうし,その度に辞めてたら今までに何十回も辞めてるし,それと同じぐらい最高と思える瞬間も腐るほどあったわけで.
じゃあなぜ動くのか.
【キャリア的には…】
10年余り,プロダクト (手で触ることができるハードウェア製品) のソフトウェアを開発していました.プロダクトは窓になり,コンテンツとサービスが直接ユーザーにリーチする世界を実感し,ここ数年はサーバー,サービス,アプリ寄りの開発に携わっていました (プロダクト開発を dis りたいわけではないし,その重要性は変わるはずもありません.ただプロダクトの役割は間違いなく変わったということ).
そんな中,サービスを native language としている場所で,コンテンツ側,具体的にはビデオに関わることをやってみたいと,漠然と考えていました.
コマース,音楽,本…と順番に,デジタルになったことによって物理的制約が無くなって,供給のされ方や消費の仕方,果てはそのものが持つ概念すら変わった (特に音楽なんて完全に概念変わったよね) という,2000年代前半から続いてきた変革の中で,やっとビデオの順番がやってきた.
— Toshiya HASEGAWA (@toshiya) March 25, 2013
しかもビデオに関しては,その概念がぶち壊されるという流れがビデオに留まらず,その枠をこえて何か凄いことが起きそうな気がする.なんていうか,オンラインビデオストリーミングサービスにこそ未来があるという,根拠のない確信があるんだよね,うまく言えないんだけど.
— Toshiya HASEGAWA (@toshiya) March 25, 2013
職場環境という意味では,こんな所で働きたいという気持ちは変わりません.今も昔もこれからもこんな場所を模索しているし,今も昔もこれからも私が率いる組織・チームはこうしていきます.
私の場合は,こんなものを求めています.これらは私が考える,モノづくりを行う企業・組織が保持すべき要素の7箇条です.
- 年齢ではなく,実力による評価
- 顧客に対する,透明性とコミットメント
- ユーザー体験に変革をもたらすことへの,こだわりと情熱
- 人と同じことを是とせず,創造性を促進する,オープンな環境
- 意思決定,ローンチ,変化に対する順応,という3点におけるスピード
- 優秀かつ才能ある人材から成る,瞬発力があり,粘り強く,生産性が高いチーム
- 指示や命令ではなく,メンタリングによる人材育成・人材指導
Peace Pipe: クラウド誕生 - セールスフォース・ドットコム物語 / それと,理想的なモノづくり企業が保有すべき要素 [book]
【転職先の次の会社的には…】
一言で言うと,そのベンチャー・スピリットに惚れた,ということかもしれません.ベンチャーかどうかって,会社の大小とは関係ないんですよね (「ベンチャー」と「スタートアップ」は同義ではない).
やろうと思えばいつでも黒字に転向できたのに,わざと赤を出し続けてやせ我慢をしながらインフラを鍛え,誰も見ていないずっと先の先を見据えて,もの凄いスピード感で投資を続けているフロントランナー.
その結果,販売チャンネル,ロジの足腰,クラウドのプラットフォーム,サービスの可用性,プロダクトのビジネスモデル,コンテンツ,ユーザーベース,マーケットの仕組み…といったピースを揃え,その中のいくつかはどこも追従できないレベルに来たのに,一向に手を休める気配すらない.普通に考えればブレーキを踏むところで,思いきりアクセルを踏んでいる.
比較的大きな会社ではありますが,「ベンチャー」が本来「冒険的・投機的」という意味であるなら,私に言わせればこの会社は「超ベンチャー企業」です.
徹底的なサービス志向に基づき,ユーザーのことを第一に考え,ユーザーの利便性を唯一の目的として,その他全てを手段と捉えている破壊的イノベーター.
大事なことなので2度言いますが,ユーザーのことを第一に考える会社.
【これまで働いてきた今の会社的には…】
転職を決意させた直接的なきっかけについては,ここに記すことはやめておきますが,端的に言うと,この会社で自分の将来像を描くことができなくなったということです.従業員をアプリやサービスと例えるなら,会社とはそれを載せる OS やプラットフォームのようなものだと思います.
現業務を考えると,タイミング的にはベストではなかったと思います.プロジェクトメンバーには本当に申し訳ありません.あと数ヶ月待ってキリの良いタイミングで動こうとも思いましたが,決めた以上は1日でも早い方が互いの為だと考えました.
身勝手な物言いですが,新天地で成功して,「人々のライフスタイルに変革をもたらす」という夢を果たすことが,何よりの恩返しになると,勝手に考えています.
右も左も分からなかった新卒の私を,ここまで育ててもらったこの会社に対しては,感謝の言葉もありません.たださ,最後にちょっと生意気なこと言っても許されるなら...もう十分お釣りは返したよね?
人間、環境に支配されるから、袋小路にはまったひとは新天地を見つけて頑張ったほうが、幸せになれると思います。年をとると選択肢はどんどんなくなるし。人生は自分のもの。会社は踏み台にすべきで、そして踏み台にされた会社はそれを誇りに思うべき。親と同じだ。
— かわんご (@kawango38) October 1, 2012
今年最初のエントリーでは,「みなさんの新年が,魔法と夢と,善良なる狂気に満たされますように」というメッセージを紹介しました.実は転職の他にもう1つ,プライベートで大きなプロジェクトをやっていて,そちらも間もなく終焉を迎えます.まさにこの数ヶ月は,魔法と夢と,善良なる狂気に突き動かされて走り抜けてきた感があります.
いろいろ相談に乗ってくれた方,最後に背中を押してくれた方,一生忘れることができない言葉をかけてくれた方,この場を借りて,改めてお礼を言います.今は,「やってしまって,良かった」と思っています.
Peace Pipe: やってしまって,良かったと思え - 選択肢は常に1つだったと考える [memo]
Start now, think later.
Change can always be good if you make it so.
物事をはじめるタイミングには,たった2つしかない.今すぐか,永久に後だ.
1960年,知名度は対立候補のニクソンに遠く及ばず,43歳という若さ (史上最年少) と,カトリック系だったこと (カトリックの大統領は35代目にして彼が最初) もあり,大統領選挙では圧倒的に不利だったジョン・F・ケネディは,「経験の無いお前に大統領の資格があるのか?」という問いかけにこう答えました.
"If He has a place and work for me, I believe I am ready."
(神が私に機会を与えるなら,私にはその準備ができていると信じよう)
目の前に新しいチャレンジがあるなら,私にはその準備ができていると信じましょう.
自分なりのモノ作りを追及していきます.
1を2にすることより,0を1にすることにこだわっていきます.
空気を吸うぐらい簡単で,おもしろくて便利じゃなくて,普通の人をニートにするようなモノを作るよ.
いろいろ楽しくなりそうじゃん.
君は何を信じて今日もそこにいるの?
分からないよ,僕は
信じたいけど
-- あの歌が思い出せない / 忌野 清志郎
僕は行くよ
違う道を行くよ
もうなりふり構わず
僕は行くよ
あるべき道を行くよ
もう出かけるところ
他にどんなやり方が一体,あるというんだ?
-- 僕は行くよ / 三宅 伸治