2006年8月18日金曜日

WWDC 2006 の Steve Jobs 基調講演,そして9年前の夏 [memo]

「エンジニアはプレゼンの達人でなければならない」という信条を持つ私は,これまでにも この Blog でプレゼンの話を書き,特に Apple の Steve Jobs のスピーチは教科書代わりにしている.

ユーモアのセンス,リズムやテンポのつけ方,表情・アイコンタクト・ボディランゲージの使い方,聴衆のひき込み方,リアクションに対するタイミングの取り方,ビデオやゲストの差し込み方,本題に入るまでの持って行き方とそれを話し終わった後のまとめ方,全てに脱帽するばかりだ.

というわけで遅ればせながら,先週の WWDC 2006 の彼の基調講演をチェックしていた.
Apple - QuickTime - WWDC 2006 (要QuickTime)

そんな中,この基調講演をレビューした Presentation Zen の記事 で,"one of the best talks by Steve Jobs at a Macworld ever" という表現と共に,非常に興味深い映像が紹介されていた.

これまでも,どことなく にはシンパシーを感じていたが,この映像を見てその思いはいっそう強まった気がする.

それはちょうど9年前の夏,1997年に Boston で開催された Macworld での Jobs の基調講演だ.


プレゼンテクニック云々という次元の話ではなく,これがなんとも感動的なのだ.思わず朝まで何度も見入ってしまった.


考えてみて頂きたい.
Steve Jobs は自ら設立した Apple Computer から,1985年に解雇されてしまう.1990年代,Apple は衰退の一途を辿り,まったく先が見える状況ではなかった.誰もが Apple のことを,このまま消えていく企業だと思っていた.1997年,そんな「死に体」同然の Apple に,Jobs は復帰する.そんな中の基調講演なのだ.

Apple に対する世間の批評を改めて紹介し,「Apple は素晴らしく実行している…間違ったことを」「プランが間違っているんだ」などと Apple が抱えている問題を赤裸々に告白し,聴衆からブーイングも起こった Microsoft との提携を発表する時にはユーモアを折り混ぜ,そして真顔で「Apple を healthy に戻すにはどうすればいいか話したいんだ.僕はそのことに,とても大きな自信を持っているんだ」と.

Jobs が復帰してからの Apple の復活はご存知の通り.今やトップブランドどころか,トレンドの中心にいる企業と言って過言ではないだろう.

英語が分からなくてもいいから,最後の2分だけでもいいから,この映像をぜひ覗いてみてほしい.Apple が置かれていた状況とは裏腹に,希望と自信に満ち溢れ,まるで今日の成功を見据えているかのような静かな誇りと闘志,そして何より自らを解雇したこの企業に対する愛情が感じられるのではないだろうか.


ところで,こんな感動的なスピーチを見た後に,某 Microsoft の CEO のこのプレゼンを見ると,あまりにも哀れなほど滑稽だ.


…っていうか,あんたは一体どうしちゃったの?


2 コメント:

匿名 さんのコメント...

毎度です。リンク先の動画、けっこうボリュームありそうなので、後日ゆっくりチェックさせてもらいます~。自分のヘタレ具合は棚に上げるとして、プレゼンの大切さは同感ですねぇ。伝える内容と伝え方。両輪がバランス良く回らねばですよねぇ~。相手はニンゲンなんですからねぇ。このへんのオベンキョもバッチリしていきたいなぁ。っていうか、そんなん前職で身に付けとけってねぇ…。ANWY、近々で私にプレゼンのチャンスあるけど、そんなハードル上げるようなブログ見せられるとプレッシャーで窒息しそうdeath。

Toshiya Hasegawa さんのコメント...

コミュニケーション能力って,技術力と同じぐらい,いやもしかしたらそれ以上に重要なスキルなのかもしれませんね.

いや,コミュニケーション能力含めて「エンジニアリング能力」が問われる,と言った方が的確なのかな.

ま,プレゼンは気楽に行きましょう.