デジタル・テレビの新たな挑戦 [ce]
先日,日経エレクトロニクスが主催する「デジタル・テレビの新たな挑戦」というセミナーに参加してきた.
プレゼンターは以下の通り:
- デジタル家電をネットにつなぐ - プラットフォームからの取組み
松下電器: 戸倉 毅氏
- ネットワーク時代のテレビ用アプリケーションのアーキテクチャ
UI Evolution: 中島 聡氏
- 「Yahoo! Everywhere構想」とデジタル・ホーム・エンジン
Yahoo Japan: 坂東 浩之氏
- IPTVの時代のネットとデジタル家電
Cisco Systems: 山崎 年正氏
- 互換DRMをうたうCoralとMarlinの役割とは
Intertrust Technologies: Jack Lacy 氏
- Bringing innovation to Television
Google: Vincent Dureau 氏
詳細はこちら.
http://techon.nikkeibp.co.jp/seminar/061212.html
Google の "Head of TV Technology" の Dureau 氏や,Life is beautiful で日本の alpha blogger としてお馴染の中島氏のプレゼンが聞けるということで,非常に楽しみにしていた.
丸1日のセッションで,細かく報告するにはボリュームが膨大なことと,内容にどこまで公共性があるか分からないので,以下は私の所感を中心に記述したいと思う.
まずプレゼンターを見ると,デジタルテレビの動向に敏感な日経エレが「ぜひ話を聞いてみたい」と集めた講演者の中で,家電メーカーが松下だけというのが象徴的だ.「ブロードバンドがテレビ/デジタル家電を変える」という副題ではあるものの,テレビのセミナーで Yahoo や Google, Cisco が呼ばれるところが今日の時代を表わしているのかもしれない (そういう意味では,確かに松下は Tナビや Viera LINK でネットワークに対する積極性,また HD-PLC のようなインフラに対するアプローチや UniPhier のようなプラットフォームに対する取り組みを見せている).
また複数の方が,まるで口裏を合わせたかのように「テレビでブラウザを見ることには意味が無い」との見解を示していたのも印象的で,いかに「テレビとしてのネットワークをユーザーに提供するか」という点が今後ポイントになってくるのだろう.
「家にある家電をネットワークで繋ぎ,サーバー側の UI をテレビで表示する」ということについて強調し,そのデモを行っていた方がいた.こうすることにより,デバイス毎に応じた操作が実現できる上に将来機器に対しても対応可能というものだが,実はこれは昔からある概念で,例えば IEEE1394 (i.LINK,もしくは FireWire) の AVC ではとっくに標準化されている (EIA-775 OSD 伝送・Command Path Through).当時はデバイス間の歩調も合わなかったが,ようやくこのような仕組みが一般家庭にも到来するのかもしれないと胸を踊らせたくなる一方で,「このようなセミナーでこれほどの方が,まだこんなことを説明しなくてはいけないのか」という歯痒さを感じた.
この手の講演では,その内容だけでなく講演者のプレゼンテクニックにも非常に注目する私であるが,中島さんの 「色に情報を運ばせるテクニック」 は確かに説得力があったし,彼や Dureau 氏はスライドにほとんど文字を書かず,あくまで「スピーカーに注目させる」というスタイルで聴衆を魅きつけていたように思う.
Lacy 氏は,スライドは文字だらけだったが,スピーキングに関してはピカ一だった.話し方にメリハリがあり,"ah..." とか"um..." などという言葉はほとんど聞かれなかった (日本語でも,話し始める前に「えー」とか「あのー」と言わずにスピーチすることは非常に難しい).
逆に口調にまったく起伏がなく,アイコンタクトもほとんど行わずに自分の PC を見ながらボソボソと話し,こちらが眠くなってしまうようなプレゼンターもいた.
Dureau 氏が Google という企業の特性について,こんなことを言っていたのが印象に残っている.
世間は Google がミステリーに包まれていると思い,どんなプランを練っているのかと語りたがる.
Google の最大のミステリーはミステリーが無いこと,
そして Google の最大のプランはプランが無いことなんですよ.
我々は,3ヶ月先のことは考えるけど,3年先のことは考えないんです.
話をデジタルテレビに戻そう.
私は「インターネットの世界が体験した (している) 変革が,家電の世界にもいずれ到来する」と何度かこの Blog で述べてきた.
ことテレビにおいては,必ず1家に1台,それもリビングの中心に存在し,またお年寄りから子供まで,男女問わず幅広く受け入れられなければいけない.ユーザーエクスペリエンスを追及するには,モノ作り冥利に尽きる,これほど魅力的な製品があるだろうか.
「放送と通信の融合」という言葉は既に使い古された感がある.そんな議論をしているぐらいだったら,できれば自らの手でテレビに変革を持たらしたいものだ.
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