2006年12月17日日曜日

2015年のサムスン [ce]

成 和鏞
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サムスンブランドの未来
サムスンの過去と現在、そして未来の姿について書かれた一冊。次期総帥として内定している2005年現在...
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日本では (特にエンドユーザーレベルでは) 極端に過小評価されている感があるが,サムスンというのは,とんでもない技術力と生産力を兼ね備え,確固たるブランド価値を築きあげつつある企業だ.ソニーや松下が血眼になって達成しようとしている営業利益率10%を軽々と超え,時価総額でソニーの2倍に達し,純利益でインテルを上回り,世界シェア1位の製品は20ほどもあると言われている.

例えばサムスンは,「その気になれば Apple とまともに対抗できる」数少ない家電メーカーの1つではないだろうか.国内の家電メーカーは,狭い日本でつまらない競い合いをしている場合ではなく,いかにこの巨人に立ち向かっていくか真剣に検討するべきなのかもしれない.


本書は,2015年という未来のサムスンについての予測が示されている.
そしてその未来図には,ソニーを吸収し,現会長・李 健熙の一人息子である李 在鎔が後継者になるとされている.

この激動の世の中で10年後を予想することはほぼ不可能に近く,それは筆者も認めているところだが,サムスンに対する綿密なリサーチを,あえて「10年後を予想すること」としてまとめあげたという点ではおもしろいアプローチかもしれない.

但し,本書は若い頃から経営の英才教育を受けてきた李 在鎔というプリンスが,同族経営企業の後継者になる過程においてサムスンを紐解くというもので,例えが良いかどうか分からないが「やくざ一家の世襲の舞台裏」についてのフィクションを読んでいるような気分に陥ることもあり,私にとってはむしろ「物語」として楽しんだ書籍だったように思う.


ところで日本でカリスマ経営者というと,例えば本田 宗一郎,井深 大,Steve Jobs,Bill Gates などは良く語られ,「李 健熙」という名前は始めて聞く方も多いだろうが,本書を読んでいて随所に感じられるのが李 健熙の絶大なカリスマ性だ.

いくつか興味深かった彼の言葉を紹介すると,

映画を見ていても,ただストーリーだけを把握するのではなく,監督がなぜあのようなアングルで撮ったのか,その場面での俳優の演技が適切なものだったのか,セリフはどうなのか,監督の意図は何なのだろうかということを考えながら見よう.

そうでなければ映画を見たことにはならない.

テレビ番組を5回以上見てもその裏面をのぞこうとしない人間は経営者とは言えない.

地下鉄に乗っていてもその運行原理が理解できなかったら,「乗る」のではなく「乗せられている」のだ

など,探究心に溢れる一面を見せている.

また多忙の身ながら毎月20冊前後の本を読了し,定期的に見る雑誌は50種類に至るという博学で,口数は少ないが話してみると,話題が豊富であるばかりでなく,奇想天外な事例や論理展開に驚かされるという.

例えばインタビューで「どんなタイプの社員が一番嫌いか」という問いに対して,自作の寓話を語って答えるという粋なところを見せている.

寓話をひとつ紹介しましょうか.
オオカミが出たといつも嘘をついていた羊飼いの少年の話を,皆さんご存じでしょう.ところがこの少年が最後にあの世に行きました.閻魔大王がなぜ嘘ばかりついていたのかと聞きました.そうしたら,少年は「退屈で,退屈でたまりませんでした.わかってください」と弁解しました.おまけに「僕の友人は,僕よりもはるかに嘘つきなのに,わまりの人たちは知らずにいます」とまで言ったのです.

つまり彼は「嘘」「弁解」「過ちを認めないこと」「人を陥れようとすること」を最も嫌い,「社員として成功しようと思ったら,この4種類のどのタイプに当てはまってもいけない」ということだ.

「無能力,無信条」タイプよりも「卑怯者」を嫌い,

全員仕事ができるわけではない.
うまく走れない人は歩け.

但し,ちゃんと走っている人に足を引っかけるようなことをしてはならない.

と強調したという.


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