Road to CEO - Google 村上憲郎 [seminar]
リクルートエグゼクティブエージェントが主催し,今回で20回目となる "Road to CEO" という無料イベント.今回のゲストスピーカーは Google 副社長兼,Google Japan 代表取締役社長の村上憲郎氏ということで,足を運んでみました.
第20回 グーグル株式会社 代表取締役社長 村上憲郎氏
このイベントは,
次代を担う経営者予備軍に当る、30代を中心とするビジネスリーダーの皆様を毎回、オーディエンスとしてお迎えし開催しております。
オーディエンス対象
現在30代〜40代前半で、将来プロフェッショナル経営者を志向されている以下の方々
・事業リーダー、経営企画リーダーで、特にWEBビジネスを手掛けていらっしゃる方
・コンサルティングファーム出身者、もしくは在籍中で事業会社の中枢ポジションへの転身を目指している方
とのことで,会場もスーツを着た方がほとんどだったように思う.
個人的には,Google トップの話が聞けるというのもあったが,これからの仕事の絡みもあって,トップマネージメントや成功体験を勝ち得た人の話から,なにかしらのヒントをつかみたいという思いがあった.
また,このようなイベントでは常にスピーカーのプレゼン技術にも注目する.今回は「トークセッション」の名の通り,プレゼンというよりは,ファシリテーター2人が村上氏に質問をしていく形式だったが,村上氏の public speaking スキルとしては「普通」だったように思う.話すリズムやテンポは一定で,1点を見つめて話し,ホストやオーディエンスともアイコンタクトを取らない (さすがに Q&A セッションでは質問者の方を見ていたが).
質問に対してすぐに答えを言わず,経緯や前置きを存分に話した後にやっと本題に触れることが多く,個人的には若干まわりくどく感じた.Yes/No で答えられる質問もしばらく背景を話した後に答えたり,最後まで元々の質問に回答せずに話が終わったこともあった.
以下,印象に残った発言をいくつかピックアップしておきます.
- なぜ初代日本法人社長が村上氏に決まったか
英語ができて,コンピュータができて,マネージメントができる人間が探されていた.
粒揃いの若者が集まっている technology oriented の会社をリードし,respect を勝ち取ることができ,テクノロジーに対する洞察力を持っていなければならない.
Eric Schmidt (Google CEO) に「でも私は最近のプログラミングは分からないよ」と言ったら「お前なら分かったふりができる」と言われた.
- Page と Brin について
知力に支えられたとんがり具合がある.
あまり多くを語らない (特に Larry Page).
それぞれスタイルは違うが,テクノロジーに対する洞察力・勘の良さはすごい.
- 当時の Google の日本に対する興味
Google は matrix organization を取っており,機能 (縦軸) と 地域 (横軸) で組織が構成されている.
地域は North America (アメリカ・カナダ),Europe/Middle East/Africa,Japan,Rest of the world の4つ.
つまり日本だけがシングルカントリーであり,経済的にも文化的にも非常にユニークな地域として認識されていた.
言語的特徴だけではなく,多くのタレントがいるという意味でも注目されている.
- Yahoo について
よく Yahoo と競合していると言われるが,その概念は希薄 (「競合していない」と言うと嘘になるから否定もしないが…).
ビジネスモデルとしては対局にある.
Web page の人気度を,page view ではなく「滞在時間」で計った統計があるが,Google は「情報を指し示す」ことが使命であり,目標は滞在時間0.
その統計によると,Yahoo が1位.
Google は22位だからまだ我々は良い仕事をしていない.滞在時間で Google は最下位にならなければいけない.
- 人工知能に対する興味はいつから?
「2001年宇宙の旅」を見てから.
- 経営者としてのスタート
30歳で DEC に転職した時,エンジニアではなく営業として入った.
実際には,本屋で「男を磨くのはセールスだ」という本を見たからという安直な理由だが,エンジニアとしてだけでは視野が狭くなる.
- 違う分野に入り込んだ時に身につけるスピード感
日立電子時代,それぞれの専門分野に話を聞きに行き,それを仕様書にまとめなければいけなかった.
内容を理解する為に,その日の帰りに本屋でその分野に関する「一番薄い本」を探し,一晩で読んでなんとか内容を理解していた.
その時身についた技術は,
(1) 薄い本を見つける技術
(2) 速読
(3) 分からないものはそのままにしといて,分かったところだけを繋ぎ合わせてでっちあげる技術
実はこれで大体は外れない.
「つまりこういことに違いない」と大胆不敵に思い込むこと.
- Google で「つまりこういうことだろう」と言うのは大変では?
仮定として間違っている.
Google ではそれぞれの分野で,「下手するとこいつ以上のやつは世界にいない」という人間が集まっている.
その人間以上のアウトプットを期待するのは間違っている.基本的に組織はフラット.
スーパーバイザーがなにかを指示しているという感じはない.あまりマネージメントという概念はない.
- では Google におけるマネージメントとは?
先ほどの matrix organization が,塊として整合性を持っているかというチェック機能.
マネージメントというよりもチェック.
外資の日本法人を預る立場としては,Google に限らずそういう側面が強い.
- 英語について
ひたすら英語をやりなさい.
英語「を」勉強したらだめ.
英語「で」勉強しなさい.
大学に入る前の若い人には「これからは英語ができないと何もできない」といつも話している.
- Google の PR 戦略は?
特殊なことはやっていない.
広報として伝えたいこと,記者の興味があることを,的確に地道にやっているだけ.
- Googlezon (Google と Amazon が合併して世界を席巻するのでは,という憶測) についてはどう思う?
まったくのお笑い,ヨタ話.
いろんな流行語が飛びかっている.
"Web 2.0" はもう古いの?
「Google はあちら側」とか言われて,「なんだもう死んじゃったのか」と思った (笑).
我々は,そういう話からは意識的に距離を置いている.
我々のビジネスモデルは非常にシンプル.
世界のあらゆる情報をインデックス化して情報のありかにブリッジすること *しか* やっていない.
この使命を成し遂げるには,200年ぐらいかかると思っている.
Web 2.0 だかなんだか知らないが,Web 3.0 でも Web 200 でも,どんな言葉で言われようと,ひたすらこのミッションを全うしていくだけ.
情報もコンテンツも,所有も占有もしない.
Googlezon なんてありえない.
シンプルに検索をしていく,それしか見えていない.
- 無償のポリシーについて
Google のサービスは無償で提供する.
どうやったら金儲けに繋がるかと考えた瞬間に,サービスが本質からねじれてくる.
自分の友達・家族・コミュニティに喜んでもらえることだけを考えて作る.
だから財務的には広告収入 (シンプルかつ情報としても有益) に力を入れている.
- どんな部下であれば評価したり出世させたいと思うか
それぞれのところで delegation (委任) させたい.
担当しているところでは,その人が一番詳しく知っていなければいけない.
「『どうしましょう?』ということだけは言うな」と言っている.自分以外にこの問題を解決できる人間はいないと思わなければいけない.
困った時は上げれば良いが,せめて案をいくつか持ってくること.A 案・B 案・C 案と持ってきたら「君ならどれがいいの?」と聞く.そいつが「うーん,多分 A 案」と言ったら迷わず A 案を選択する.例えそれが間違っていても,それが会社の実力.そして「責任は2人で取ろうね」と言う (「お前が責任を取れ」とも「俺が責任を取る」とも言わない).
- Google でもタレントマネージメントが必要か
Google はタレントの塊.
あるとしたら,フェアネスを強調していくこと.ゴールを,本人・会社双方の目標として決める.
もう1つは,その中でも秀でた成果に対してアワードを与える仕組みを作り,祝福してやること.
- 経営者という観点で,重要だと思っている要素
仕事をやりやすくすることが私の仕事.そういう環境・文化を作ること.
いつかは自分の部下の中から,将来の外資系の社長を輩出したい.
- 5年後10年後に経営者として育てたい人材のどこを見ているか
向上心があること.自己啓発をする人間.
明らかに「成長」している人間.
四半期ごとに,明らかに脱皮している人間というのがどうしてもいる.
- Google が発見した10の事実 の10番目,「すばらしい、では足りない。」について詳しく
自戒しないと天狗になる.
Google のサービスには,いつまでも beta とついている.
いつまでも「まだだ」と思っている.
いつまでもユーザーの声を求め続けたい.
- 経営者として,継続的に利益を出しながらサービスを出すコツ
特別な Google 流の秘策はない.
マーケット・コンペティターの動向を見て,ニーズを分析すること.
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