Sunday, April 19, 2015

GTD (Getting Things Done) - やると決めたことをやるのは,意志の問題ではなく,スキルである [lifehack]

仕事でもプライベートでも,様々な「やること」がありますよね.これらをきちんとこなせるかどうかは,意志が強い・弱いということよりも,「こなし方のスキル」を知っているかどうかに寄るところが大きいのではないでしょうか.

私自身,もう8年ぐらい GTD を実践していますが,知れば知るほど奥が深く,いまだに新しい発見があるのが GTD です.今回は,そんな GTD の私的メモを綴ってみたいと思います.


【GTD とは?】

"Getting Things Done" の略で,デビッド・アレンが提唱する,「やることをこなす」為のテクノロジーです.ハッカー文化におけるライフハックの1つとされ,仕事が複雑化し割り込みが多い近年の頭脳労働者には適さないという理由から,優先順位や計画を強調する従来のタイムマネジメント手法を否定しています.

頭の中で「やるべきこと」を考えないのが要点であり,アレンの言葉を借りれば,

頭は,クリエイティブなアイデアを創造する為にある.
それらを管理・蓄積する為ではない.

ということ.「あれもしなくちゃ」「これもしなくちゃ」という焦りを頭の中で空回りさせるのではなく,いかに素早く「やること」を頭の外に追い出し,自動運転させるかに主眼を置いたテクニックです.


【GTD を簡単に紹介】

とても「簡単に紹介」できるものではありませんが,少しだけ解説してみます.

GTD では,
1. Capture (収集)
2. Clarify (処理)
3. Organize (整理)
4. Reflect (レビュー)
5. Engage (実行)
のステップで,「頭のモヤモヤ (Stuff)」を扱います.

多くの人が非効率な処理をしてしまっているのは,この5つのステップを混同し,いくつかを同時にやろうとしている為 (特に「収集」しながら同時に「処理」「整理」しようとしている),あるいは5つのステップを全て同じ方法やツールで行わなければいけない思っている為,と説いています.

第1ステップの Capture (収集) では,素早く「モヤモヤ」を頭の外の「インボックス」に追い出します.その為には,それを可能とし,信頼できるツールを確立すること (別に紙とペンだって良い),またその過程で処理や整理を同時にやろうとしないこと.

第2ステップの Clarify (「処理」と訳されていますが個人的には「明確化」の方が適切だと思います) では,体裁を考えず素早く収集した「モヤモヤ」について,その正体は何なのか,本当にやるべきことなのかどうか,明確にします.

留意点は3つ.
- いちばん上のものから処理していく (優先度を否定)
- 一度に1件ずつやる (マルチタスクを否定)
- インボックスに戻さない

下のフローチャートでもう少し詳しく説明します.

第3ステップの Organize (整理) では,第2ステップで明確になった「やること」を整理します.シチュエーションごとに整理するのが秘訣で,例えば「仕事」「プライベート」というカテゴリーで整理するのではなく,「自宅」「職場」といったコンテキストで整理するのです (職場でプライベートのことを処理した方が良い場合もあるでしょうし,自宅にいる時は「職場タスク」は全て無視できる).

こちらも下のフローチャートでもう少し詳しく説明します.

第4ステップの Reflect (和訳の「レビュー」では意味が軽すぎる.「向き合い」や「自己との対話」というニュアンスでしょう) では,「何も見落としていない」という自己への自信を持ち,システムを更新します.

第5ステップは Engage です (この「実行」という和訳は完全に間違い.後述します).実は第1-4ステップは,壮大なネタ振りであり,第5ステップでは「直感を信じてやるだけ」とアレンは言っています.第4ステップまでを正しく実行してきたのであれば,自分の直感に自信を持つことができるはずだと.


ここで有名な,GTD フローチャートを紹介します.



「頭のモヤモヤ (Stuff)」に対して,まず「アクションを起こせるかどうか」を考えます."Maybe" は "No" です.

No であれば,Trash (捨てる,忘れてしまう),Someday/maybe (いつかやる/多分やる),Reference (行動が伴うものではなく,必要な時に参照するような情報だった) のどれかに分類します.重要なのは,勇気をもって捨てること.及び,「いつかやる/多分やる」は「後で考える」とは違うことです (後者はただの先延ばしです).

この後 Yes に進むのは全て「アクションを起こせるもの」ということになりますが,次に,その対象に対する「最初に取るべき行動 (Very next action) は何か」を考えます.そしてその最初に取るべき行動1つで,その対象をコンプリートできるかどうかを考えます.

No であれば複数のアクションを要するということなので,それは「プロジェクト」として別途定義します.

Yes であれば,「2分以内に終わるかどうか」を考えます.Yes であれば,何も考えずにすぐその場で実行.

No であれば,「自分がやるのが一番適切かどうか」を考え,No であれば適切な人に渡して「ウェイティングリスト」に載せます.

Yes であれば,特定の日付にやるものかどうかを考え,Yes であればカレンダーに載せてその日まで気にしない.No であれば,シチュエーションごとに,例えば @職場,@自宅,@PC,@電話 といった具合で整理します.

もしこのエントリーで,1つだけ覚えるとしたら,ぜひ 2-minute rule を覚えて実践して下さい.「2分以内に終わることは,あれこれ考えずにすぐその場で実行」を心掛けるだけで,世界が変わります.2分でいかに多くのことが終わるか,驚くことになるでしょう.


【GTD のポイントと本質】

私が考える,GTD の2つのポイントと,1つの本質を述べます.

ポイントの1つは,フローチャートの中にある Trash,すなわち勇気を持って捨てることです.私達は,必要以上に多くの「やるべきこと」を自分に課しているのではないでしょうか.

フローチャートの最初のステップは,「アクションを起こせるかどうかを考える」でしたが,アクションを「起こすべきかどうか」「起こさなくても困らないか」ぐらいで考えても良いかもしれません.

「どれぐらい捨てるべきか」は人によって当然違うでしょうが,ここではあえて定量的に,「8割を捨てる」ぐらいの気構えを持ってみてはどうでしょうか.頭の中を駆け巡る「モヤモヤ」のうち,本当に重要なことって2割ぐらいだろ.

もう1つのポイントは,next action の考え方.それは本当に,目的に近づく為に適切な next action でしょうか? 例えばアレンは,会社で何かを決める必要があった時に,「決める為のミーティングを設定する」は next action ではないと明言しています.


そして私が考える,GTD の最大の本質は,第5ステップの "Engage" にあります.「実行」と訳されてしまっていますが,engage とは本来,「愛着」「約束」「思い入れ」「絆」「繋がり」のような意味です.婚約するという意味もあるので,要はそれぐらいの愛情と約束を誓う言葉であると解釈して下さい.

GTD を「生産性アップ」というキーワードで語る人もいますが,個人的には「仕事,大切な人,健康などといったものに,engage する手法」だと捉えています.

GTD が,ただの効率化手法であれば,私はここまで陶酔していないでしょう.と言うか,計画通りにモノゴトが終わったからといって,一体どんな良いことがあるというのだ.くだらない.むしろ私は,計画的な人生など,大嫌いである.

例えば子供と遊んでいる時に,「オムツが少なくなってきたんだった,買いに行かなきゃ」とか,「来週には入園式だからあれとこれを準備して…」などと思い出すと,「ああ,私って子供のことを良く気にかける親だ」という実感を持つかもしれませんが,それは錯覚です.子供のことではなく,やることを気にかけているだけだからです.子供の為には,純粋に子供と遊んでいる時間に engage することが一番であり,GTD はそれを可能にする手法なのです.

アレンが,lynda.com のインタビューで語っていた内容です.

Getting Things Done (GTD) は,getting things done (モノゴトを終えること) のことではない.あなたの大切なものに,適切に engage することである.

"Engage" とは,ハードワークをすることではない.時には,ただ座って瞑想し,自分と向き合うことも engage かもしれない.頭の中が心配事だらけでは,そんなピースフルな瞑想をすることも難しいだろう.

「やるべきこと」から自由になり,クルーズコントロール (自動運転) させよう.頭の中が空になれば,あなたは直感を信じることができるようになる.

頭の中の空いたスペースは,クリエイティブな創造に,あなたの人生にとって本当に大切なことを考えることに,あなたの愛する人を考えることに,使おう.それらと接している時に,うわの空になるのではなく,engage しよう.



【もう少し詳しく知りたければ】

本質は上に述べた通りですが,実際のやり方については,この辺りが分かりやすいでしょうか.

GTD歴6年目の私が、これ以上ないくらい丁寧に解説します【総括】
生産性アップの金字塔「GTD」の理念をおさらい
【翻訳】15分で分かるGTD – 仕事を成し遂げる技術の実用的ガイド


【さらに詳しく知りたければ】

やはりデビッド・アレン自身による本を読まれるのが一番です.

4576082116はじめてのGTD ストレスフリーの整理術
デビッド・アレン


4576101714ひとつ上のGTD ストレスフリーの整理術 実践編――仕事というゲームと人生というビジネスに勝利する方法
デビッド・アレン


4576060732ストレスフリーの仕事術―仕事と人生をコントロールする52の法則
デビッド アレン



【Leo Laporte が GTD について語ったこと】

余談になりますが,Leo Laporte が,彼のラジオ番組 "The Tech Guy" で GTD に触れた内容が,非常に興味深かったです.特に「To-do リスト管理に凝り過ぎると本末転倒になる」というのは,本当に耳が痛かった.

私も,「実際にやること」よりも「タスクを管理すること」に躍起になってしまいがちな時期があったので,その時は「2分ルール」に加えて,「3時間ルール」というのを勝手に作って実践していました (3時間以内で終わる仕事は,整理する前に取りかかってしまう…つまりほとんどの仕事ですが).

2010年8月の The Tech Guy の,1:21:25から1:35:28あたりまでの,約15分間です.以下に要約します.

・Leo の言葉で,GTD とは
 ・「やること」をクイックに頭から取り除き,
 ・その分,頭はクリエイティブなことに使いつつ,
 ・「やること」は信頼できる場所に保管し,
 ・それらと適切なタイミングで向き合い,
 ・適切な時に適切なアクションが取れるようになること

・やることの優先順位
 ・「緊急度」でつけるものではなく,
 ・それをやった時にもたらされる「価値」でつけるべき

・GTD で陥る失敗の1つは,管理に凝りすぎてしまうこと
 ・「実際にやること」よりも「やることを管理すること」に躍起になってしまう
  ・実際にやらずに,「それをどうやってやるか」ばかり考えている
 ・特にギークタイプの人は,何でもこねくり回したがる
  ・まさに「策士策に溺れる」

・ツールもソフトウェアも,問題は解決しない
 ・問題を解決するのは「あなた」
 ・「あなた」にとって使いやすいツールが,ベストツール (例えそれが紙とペンであっても)
 ・ツールは,それを使う人以上には,頭よくならないもの

・「やることリスト」は,自分や他人に対する「約束」と考える
 ・人との約束は,守るもの
 ・GTD とは約束を守る為の手法


「ところで Leo Laporte って誰?」という方は,この辺りをどうぞ.
Peace Pipe: "The Tech Guy" って知ってる? [memo]
Peace Pipe: So you go ahead and do it - Leo Laporte [memo]


【さらに余談】

さらに余談ですが,私は RTM (Remember the Milk) というツールを使ってタスクを管理しています.もし良いツールを探しているのであれば,試してみる価値はあるかもしれません.
Remember The Milkは、こんなことができます...
Remember The Milk 日本版 公式ブログ » Remember The Milkで快適GTD
Peace Pipe: Remember The Milk で便利な21の検索 [lifehack]

今ではサンフランシスコに拠点を移し,500万ユーザーを越えるサービスになった RTM ですが,まだオーストラリアで2人で開発していたスタートアップの頃に,創業者に会ったことがあります.
Peace Pipe: Remember The Milk ハッカー (と猿) とのランチ [diary]


【いろいろ長々と書きましたが】

GTD は,大きな人生のゴールから,毎日のメール処理まで,様々なレベルに適用できるテクノロジーです.一番の効用は,澄みきった頭と心を手に入れ,本当に必要なことに engage できるようになることです.もし興味があれば,「2分以内に終わることはすぐその場で実行」ルールからだけでも,実践されてみてはいかがでしょうか.


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