2013年6月2日日曜日

弾言 - 成功する人生とバランスシートの使い方 [book]

弾言 成功する人生とバランスシートの使い方

テクノロジー業界・ブログ界隈では有名人である,小飼 弾さんによる2008年出版の1冊.1500円の本書,なんと Kindle 版が100円になっていたので,買って読んでみました.

本書のテーマは,「あなたは自分という会社の社長で筆頭株主.人生の負債を減らして利益を上げ,上手に自分を経営しよう」というもの.貸借対照表 (バランスシート) に基き,世界をヒト,モノ,カネの3要素に仕訳けした上で,それぞれに弾さんなりのメッセージを投げかけています.

ここでは,特に感銘を受けた第1章の「ヒト」の内容を,本書の引用を交えて紹介します.


まずは働くことについて.

どんなにお金が必要でも、週40時間以上仕事をしてはいけないと思います。そうやって月収が10万円にしかならないのであれば、10万円で生活できるように切り詰めるべきです。


ワーキングプア問題の本質は、もらえる給料が少ないということではないんです。多くの貴重な時間が奪われているということなんですよ。


要するに、自分の時間を安売りしているんですよ。一番貴重なリソースなのに。


月20万円必要なのに15万円しか稼げないなら、月15万円で暮らせるように自分をいじって、5万円分は時間としてもらいましょう。これは何歳になっても変わらない真理です。


残業が毎月40時間以上なら、辞めた方がいい!


「時は金なり」という言葉があるけど,私に言わせれば随分時間を見下した言い方です.時間は,金なんか軽く凌駕する価値を持ちます.

小金を稼ぐ為に残業している社員には,それで犠牲にしているものを再考してほしい.逆に彼等に,自己投資の勉強を会社でやって残業代もせしめる,ぐらいのしたたかさがあるならそれでもいいんだけど.

残業は,するのもさせるのも恥ずかしいという価値観は,もっと広まるべきです.

本書の中でも紹介されていましたが,残業の考え方については,こちらの本もオススメです.
Peace Pipe: 「残業ゼロ」の人生力 [book]


さらに弾さんは,こう提言します.

会社に残るべきかどうかの判断基準としてはもう1つ、いい仕事をしている人が身近にいるかどうかです。


そして「いつでも辞められる」という自信が、仕事にもポジティブに働きます。そうなった時に、もう一度辞めるべきかを考えてみましょう。「やっぱりこの仕事まだ学ぶべきことがあるな」と思えば続ければいい。しかしそうでなければ、今度こそすっぱり辞めちゃいましょう。


会社にしがみつくのではなく,「いつでも辞められる」という自信を持つことは重要です.私のまわりを見ても,「会社の中でどうにかなってやろう」と考えて小さくまとまっている人よりは,世界という舞台に自分を置けている人の方が,どうしたって魅力的です.


ではその時間で何をするかについて,弾さんは「読書は最強の自己投資」と主張します.

読書に限らず、情報を取り入れる時には、問題意識を持っているということが重要です。自分は何を知るべきかは、自分に何が足りないかを考えれば見えてきます。


本を読了しても、それは読書の半分にすぎないということです。本を読み終わったら、今度は「自分を読んで」みてください。その本を読む前の自分と読み終わった後の自分がどう変わったか。読書の質は、この差で測れます。これを必ずやって下さい。


本だけを読んでいても、本を読んだことにはなりません。自分の経験と照らし合わせて、やっと本に書かれていることが実感できるようになります。


僕は、本にまったく付箋を貼りません。付箋を貼るのは、情報を固定化する行為なんですよ。本に書いてあることが完全に理解できていなくてもいい。「だいたいこんな感じ」と曖昧にしておくことも重要です。


なるほど.書評ブロガーとしても有名で,出版社や著者から1ヶ月に300冊にも及ぶ献本を受けている彼 (実は私が翻訳した本も送ったことがあります) が言うと,説得力がありますね.


他にも琴線に触れた部分をいくつか紹介します.

情報洪水に溺れないコツを語る部分では,特にこの一言に目から鱗が落ちました.

結局は、どこにチャンネルを合わせるかなんですよ。よく誤解されることですが、チャンネルは情報を入手するためにあるのではなく、そのチャンネル以外の情報を捨てるためにあるのです。



「目的は自分の視野を狭くするためのツールである」という定義も新鮮でした.

よく「手段と目的を違えるな」と言いますが、むしろ「目的を手段と違えるな」と言いたい。目的を設定することは、手段です。


目的を設定することで、視野は狭くなります。これが重要です。「目的」は、自分の視野を狭くするためにあります。



コミュニケーションについて,この辺りはいかにも弾さんらしい.

人の力で、自分が優しいフリをするなと言いたい。僕にとって、偽善者の定義はそれです。


自分が不幸だと感じるのは、不幸が好きだからです。不幸から抜け出すには、好きで不幸になっているということに気づかないといけません。



…という感じで,いつもの歯に衣着せぬ物言いで,第2章以降のカネ,モノも,展開されていきます.まあなんせ100円ですし,気軽に手に取ってみてはいかがでしょう.

全体的な所感としては,彼らしいユニークな視点は随所に見られるものの,ブログで見せる鋭い切り口よりは少し控え目な印象を持ちました.やはり生粋のブロガーなのでしょうか.

冒頭で紹介した「働くこと」については,彼のブログエントリーの中では,特にこれが好きですね.
404 Blog Not Found:真・仕事の法則

本書の内容とは関係ありませんが,こちらも合わせて紹介しておきます.
Peace Pipe: Matz x Dan x Daiji 「エンジニア進化論」 [seminar]

B00CHRPX6U弾言 成功する人生とバランスシートの使い方 (Kindle 版)
小飼 弾


4757215339弾言 成功する人生とバランスシートの使い方 (単行本)
小飼 弾



姉妹書? の「決弾」も,Kindle 版100円になってましたよ.
B00CHRPZ5O決弾 最適解を見つける思考の技術 (Kindle 版)
小飼 弾


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