続 子どもへのまなざし [book]
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前作「子どもへのまなざし」は突き刺さるほど心にしみたのに,なぜかしばらく手に取ろうとはしなかったその続編を読んだ.
前作は著者の講演をまとめたもので,親としての概念的な心構えみたいなものが伝わってくる本だった.本書「続 子どもへのまなざし」は,前作の読者から寄せられた質問をまとめたものであり,より1歩踏み込んだ,具体的な内容が書かれている.
とても真剣で,苦悩に満ちている,でも親であれば誰しも感じるような質問の数々.それらに対する著者の回答は,びっくりするような内容ではなく,決して世紀の大発見でもない.むしろ当たり前だけど,とても大切なことを,育児の枠を越えて思い出させてくれる.
例えば著者は,サラリとこう言ってのけるのだ.
他の人を大切にできない人が、自分を大切にできたことはないと思っています。
世の中の多くの人が、いろいろな不完全さを持って生きているのです。それが人間なんだと、理解した方がいいと思います。
本書は,第1章で様々な子育てについての不安や疑問に答えつつ,以降「母性と父性について」「育児と社会とのかかわり」「障害のある子ども」というテーマに特化してそれぞれ1つの章を費やしている.
その中には前作と同じように,力強くも優しさにあふれたメッセージが散りばめられている.
「幼い子どもにとっての最大の贈物は,親が子どもに希望を持ってやることで,それ以上に価値のあるものはない」
「子どもが望んだことは,何でも満たしてあげればいい」
「子どもの中に親に大切にされたという経験があればあるほど,社会のルールを自然に守れるようになる」
「子ども自身が十分に思いやりを受けてこなければ,子どもの中に思いやりの心は育てられない」
「子どもの中に,母性的なものが十分に与えられたあとにしか,父性的なものは働かない」
…などなど,どれも目から鱗がポロポロと落ちてくる.
個人的には,以下の2点が特に心に響いた.
1つは,今日に対する生き方である.
過去のことにいつまでもとらわれているということは、じつは、現在がうまくいっていないからなんです。
過去にとらわれてしまうから、今やるべきことができないのではなく、私は逆だと思うのです。今の課題にうちこめないから、過去の不十分さにとらわれてしまう、そして未来に不安を持ってしまうということなんです。
人には誰しも大きな悩みや不安がある.過去に後悔することもあるだろう.だが著者は,過去は決して現在の足枷になるようなものではないと主張するのだ.
そう思えば,現在を100%生きることが重要だと思えるし,何もない未来に足を踏み出す気になるかもしれない.
Peace Pipe: WYDKYDK - 何もない未来に向かって [diary]
例えば何か新しいことを始める時とか,あるいは好きな異性に告白する時など,「もしかしてダメなんじゃないか…」という考えがよぎったりするが,これから起きることなんだから,どんな結果になるかは誰にも分からないはずだ.だから結局「もしかしてダメなんじゃ…」っていう考えは,過去から来ているものなのだ.ドラマや映画でそんなシーンを見ていたり,自分や他人の過去の失敗例を沢山知りすぎているから.
でもそれって,未来を過去でペイントしているようなものなんですね.自分の未来にリミットをかけている.未来は真っ白で何もないんだって思えれば,新しい一歩が踏み出せるかもしれない.
もう1つは,短所よりも長所に目を向けることの大切さである.
みなさんも、ご自分の短所や欠点や弱点を直すことができましたか、あるいは、日々直すようにしていらっしゃいますか。私は自分の欠点など、なかなか直せないんです。
人は,物質的に豊かな社会に住んでいるほど,外罰性・他罰性を強くするものだそうだ.私たちは,自分のまわりにいる相手に対して,その人が持っている長所より,欠点や短所のほうに敏感になる.
だが著者は,優れた親というのは,人の長所や才能を発見する能力のある人だと説く.それは,大人同士の社会においても,とても大切なことのように思うのだ.
前作を読まれていない方は,前作を読んでから読まれることをおすすめしたい.
Peace Pipe: 子どもへのまなざし [book]
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