著者のポール・アーデンは,数々の著名な広告を手がけたクリエイター.本書の主張を一言で表わすなら,原題の "WHATEVER YOU THINK, THINK THE OPPOSITE" が示す通り,「既成概念を壊し,人と違うことをやろう」でしょうか.
本書は,こんな風にはじまります.
この本は「常識はずれな行動」の重要性を説明している。
「無茶をすること」が、いかにあなたの人生を安定させるか。
「まともじゃない方法」が、なぜ論理的な方法よりも優れているのか。
(中略)
この本はあなたが以前考えていたこと(たとえあなたが以前何を考えていたか、自分で知らなかったとしても)をめちゃくちゃに壊すだろう。
そのかわり、いくつかの確信を与える。
人生はもっとリスキーに生きた方がいいし、仕事はもっと面白おかしくやった方がいい。そして想像をはるかに超えるほど、自分はもっと自由で、適当で、でたらめな人間になった方がいい、という確信である。
この本を読んだ後は、もう何かに悩んだり、迷ったりする必要はない。
以降,見開き2ページで1つのメッセージを,象徴的な写真やイラストと共に投げかける,言わばポスターセッションのような本です.
そのメッセージをいくつか紹介すると,
「最初から『誰も選ばないもの』を選べ。それが正解だから」
「願望を捨てろ。欲求を持て」
「『やりすぎ』くらいをめざせ」
「考える前に動き出せ」
「エゴを隠すな」
「反逆者の価値を、いますぐ認めろ」
「賢くやろう。としない人が一番賢い」
…といった具合で,生きる上でのちょっとしたヒントが,力強く簡潔に述べられています.確かに物事をちょっと違った角度から捉えてみるには,いいきっかけになるでしょう.
さて個人的に思ったのは,本書は「破」ではなく「離」として摂取しないと本末転倒だよな,ということ.
武道や芸道における成長過程を表す言葉に「守破離 (しゅはり)」というものがあります.学問,技術,経営など,あらゆることに当てはまる理念です.
最初の「守」の段階では,師の教えを忠実に守り,それをしっかりと身につける.
次の「破」の段階では,師の教えをあえて破り,独自のやり方を見つけていく.
そして「離」の段階では,「師の教え」などという概念は既に無くなり,そこから離れて何事にもとらわれない境地に至る.
「シンプルに生きよう」などと考え出したらそれはもうシンプルではないし,「常識にとらわれないようにしよう」と思った瞬間に,今度は常識にとらわれないようにするという価値観にとらわれてしまうんですね.
だから「既成概念を壊そう」という本書の主張には同意するものの,それは手段であって目的にしてはいけない.
もともと全ページフルカラーでとても美しい装丁なので,それを楽しみつつ,「まあそんな考え方もあるよねー」ぐらいに気軽に眺めるのがいいのかもしれません.
PLAY・JOB (プレイ・ジョブ) ポール・アーデン |
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