2012年8月22日水曜日

「グローバル」って言いたいだけだろ…? [memo]

「グローバルに活躍できる人材育成を…」とか「グローバルなビジネス展開を…」みたいな話は時折耳にしますが,そんなことを声高に言っている人に限ってその内容が単に「英語が話せること」とか「海外展開すること」だったりしてゲンナリすることもあります.

製品における個別最適という観点で考えてみたいと思います.

世界の国々で文化やトレンド,ライフスタイルが違うことは言うまでもなく,ビジネスを行う対象国の事情を汲み取ったモノ作りが大切と一般的に言われます.その為に,日本の殻にこもらず,積極的に外の世界を見ることが重要だと.

否定はしませんが,もう少し深く考える必要がありそうです.

例えば iPhone や iPad など,単一モデルで世界を席巻している製品は,どう説明するのでしょうか (キャリアの違いから生じる差分や,日本ではデフォルトでカメラのシャッター音が消えない等,厳密には若干の地域差分はありますが).

「クールな製品であれば,文化やライフスタイルを越えてヒットする」ということ?

…全然違う.

iPhone/iPad は,ハードウェアやソフトウェアの基本部分は世界共通でも,その上に乗るコンテンツ,つまり iTunes ストアは国ごとに展開されており,規約やライセンスも各国で異なります.音楽やビデオに限らず,自分好みのアプリをインストールするという一般的な使い方において,エンドユーザーレベルではまったく別の,国ごとに見合ったコンテンツ流通経路を通じて製品を体験していると言えます.単に,日本では未だ iTunes Match が使えないという点だけ取りあげても,iOS デバイスがもたらすユーザー体験は日本とアメリカで大きく異なるでしょう.

要するに,iPhone/iPad のモノ作りにおいて,Apple はあくまで「プラットフォーム」を提供し,国ごとの細かいカスタマイズはコンテンツ (ストア),サードパーティー,アプリ開発者の側に振って,線引きをしているのです.

サービスではどうかと,Facebook に目を向けてみます.

例えば「コネクションサーチ」は,日本におけるユーザーの確保,また mixi という先行者がいる中でリリースされた,日本独自機能です.一方で,アメリカにおける Quora のようなサービスの台頭を受けて同じような Q&A 機能をリリースしたり,「特定のスマートフォンを特別扱いしない」と明言していたりします.

ソーシャルグラフという価値提供,及びそれを成長させ囲い込むというビジネスモデルを軸に,やはり一貫した線引きがありそうです.

言いたかったことは,「なんでもかんでも国ごとにテーラリングすれば良い」というものでもなければ,「世界に通用するカッコいいサービス・製品を作ろう!」という単純な話でもない,ということです.

仕様だけでなく,販売やサポートにまで広げると,さらに話は複雑化するでしょう.どこまでを本社に集約させ,どこから現地化するのか,何をどこまで個別最適するのか.その手段と目的は何か.

…のような戦略,及びそれを考えられる人.
それが私が考える,グローバルの定義です.

自社の状況やカルチャーを肌感覚で持ち,対象製品やサービスとビジネスの特性,及び対象地域の環境や文化を理解し,それを具現化する為の手段を複数提示して,それぞれのメリット・デメリットを精査した上でトレードオフのバランスを取り,多種多様なステークホルダーとコミュニケーションを取って合意形成を図り,線引きを行う.

以前も書きましたがこの線引き,妥協するところは絶妙に妥協し,譲らないところは1歩も譲らずに引いた線は,直線ではなく,ぐにゃぐにゃした線のはずです.直線なら素人が引いても10回に1回は成功するかもしれないが,ぐにゃぐにゃした線は当てずっぽうでは引けないのです.


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