2010年1月4日月曜日

キャリアに対する考え方が変わった日 [memo]

いつか書こうと思っていた話ですが,年も明けて今となっては去年の話なので,そろそろ書いてもいいかな.


私は,転職する気がある・ないに関わらず,自分の市場価値を確認する為に,1年に1度は就職面接を受けるようにしています.自分の会社でしか通用しない人間になっていないか,外ではどんな技術が必要とされているのか,他社では今と同じぐらい,あるいはそれ以上稼げるのか…そういったことを常に認識しておく為です.

2009年のその日も,ある人の勧めで,ある会社を受けました.

英語の試験,プログラミングの試験,4人の技術者の面接などをクリアして,最終試験は社長面接でした.比較的小さなその会社は,社長自ら最終選考を行っていたのです.

その社長は,業界ではちょっとした有名人で,多くの尊敬を集める,いわゆる「ビジョナリー」と言われる方でした.実際に会ってみて,それは噂以上だと断言できます.

ものの15分ほど話して,彼は私という人間を見抜いたようです.

彼は,私という人間を認め,彼の会社で私は活躍するだろうと言ってくれました.彼の会社が探しているような人材だとも言ってくれました (リップサービスじゃないことを願いますが…).

その上で彼は,私自身のキャリアを考えて,「あなたは転職するべきではない.今の会社に残る方がいい.だからあなたは採れない」と言いました.

「僕は時々矛盾するんだ」と言いつつ,自分の会社の新しい戦力の可能性よりも,フラッと面接にやってきた私のキャリアを一番に考えてくれたのです.


曰く,

「あなたが今辞めたらエンジニアとして辞めることになる.それは4年前でもできたでしょう? どうせ辞めるなら,マネージャーになってから辞めなさい」

「優秀な人ほど会社に残る.今いる会社のカルチャーをもっと吸収するべきだ」

「今の会社から学べることがまだ山ほどある」

「人員削減などがあって困っているなら採用するが,あなたはちっとも困ってないじゃないか」

「ウチに来てもいいけど,あなた自身がアンハッピーになるよ.あなたはスポイルされると思うよ」

…みたいなことでした.


私が,「優秀な人ほど会社に残るなんて聞いたことない (一般的にはデキる人ほど早期退職すると言われる).それに,特定の企業文化がコビりついた人間なんて融通がきかず使いものにならないのでは?」と反論すると,「会社の看板がないと仕事ができない人はそうかもしれないが,どこでも通用する自信があるなら,これ以上ないぐらい今の企業文化を吸収するべきだ」と切り返されました.

私が心から信念を持って話す内容と,前日に考えたような内容は瞬時に見破り,後者については,「そんなマーケティングが使うような言葉は聞きたくない.2-3年先の目先の話ではなく,10年・20年先を見据えた話をしてくれないか?」と一蹴されました.

心を開いた後は正直に,「ぶっちゃけ,自分の市場価値を確認する為に定期的に転職活動をしているんです」と言うと,彼は苦笑しながら,「それでリクルーティングマーケットの動向は分かるかもしれないが,例え今の報酬の2倍支払う企業が見つかっても,あなたの価値が急に2倍になるわけじゃない.あなたの価値は,あなたのタイトルで決まるんです」と言われました.

そして,「あなたは今の会社が嫌だからここへ来たんですよ? 自分では気付いていないかもしれないが,どこか嫌なんですよ.でもそれは木を見て森を見ずというもの.嫌なことは山ほどありますよ.目先の嫌なことなんて気にしちゃいけない.そんな小さな嫌なことを乗り越える過程こそ,後々の財産になるんです」とも話してくれました.


結局,就職面接っぽい話をしたのは最初の15分ぐらい.
最初の15分で「あなたは採れない」と言われ,残りの45分は,私が彼のこれまでのキャリアや考え方を質問したり,彼が私に今の会社で働く上でのアドバイスや心構えを話してくれたりといった時間でした.


…就職面接を受けにいって,メンタリングを受けるなんて,一体誰に想像できよう?


彼が話してくれた中で,特に印象に残っている言葉です.

私は明るい人が好きですよ.
几帳面じゃないほうがいい.

優等生は出世しない.

ちょっと隙があるぐらいの,とことん明るい人がいいですよ.

自分には実力があると信じましょう.
そんな星の下に生まれてきたと,信じるんです.


その日のうちに,このブログの URL をそえて,お礼のメールを書きました.もし読んでくれているなら,この場を借りて,改めてお礼を言います.


さあ,明日は2010年の仕事始め.
今年から新しい組織で,新しい仕事をはじめます.

まあ当分,今の会社で一生懸命がんばりますよ.


5 コメント:

匿名 さんのコメント...

丸の内でウエブ屋やってる女性ですー。

「優秀な人ほど会社に残る」
というのは伝統企業でもドベンチャーでも
そうなんでしょうか…(謎)。

ただまあ、会社も結局「類友」なので
世間での評価というより経営者のレベルに近い人が
残っていくんだと思います。

経営者のレベルから著しく乖離した人
=優秀"すぎる"人 & ダメ"すぎる"人
というのは結局扱えないので辞めて行くかなあ、
というのが会社員歴10年のわたしの実感。

> 私は明るい人が好きですよ.
> 几帳面じゃないほうがいい.
>
> 優等生は出世しない.
>
> ちょっと隙があるぐらいの,とことん明るい人がいいですよ.

これって異性選びにも通じるような(笑)。

面接お疲れ様でした☆

アオキン さんのコメント...

相変わらず、Toshiさんの生き方は面白いなぁ。
同時に、自分も色々試したり知りたくて自社以外の仕事を色々していたのだと思いだしました。
今の会社は頭の良い人が沢山いますよね。
それで成り立っているような無駄の沢山あるから、平凡な人が紛れ込んで育つと、どこでも使いものにならなくなると思います。
でも、大半の人はエンジニアリングやそれに関する勉強に飢えている人だから、
大丈夫なのだと思います。

Toshiさんとの仕事は実験してるみたいですごい楽しかったなぁ。
あのワクワク感は、仕事していてなかなかないですよ。

今年もよろしくお願いします。

Toshiya Hasegawa さんのコメント...

> atmark さん
どうも,はじめまして (ですよね?)
コメントありがとうございます.

| 世間での評価というより経営者のレベルに近い人が残っていくんだと思います。
なるほど.
楽天の野村前監督も「組織はリーダーの力量以上には伸びない」と言っていましたね.今さらながら,身にしみる言葉です.


| これって異性選びにも通じるような(笑)。
むむ,思ってもみませんでした (笑)


> アオキンさん
どもども.
いやーホント頼りにしてましたよ.

| Toshiさんとの仕事は実験してるみたいですごい楽しかったなぁ。
なによりの言葉です.
貴重なこの人生,決まりきったことをやってる暇はないですよね.

今年もよろしくお願いします.

のもお さんのコメント...

あけましておめでとうございます。

今年になってブログを1日1回は更新しようと

決めまして、足繁くBloggerに来てます

Twitterも始めましたので、あとでフォローさせてもらっていいですか?

離婚やらなにやらいろいろあった昨年から

気持ちを新たにしようと、画策しておりますが、Toshiさんのブログ読ませてもらって

勇気が湧いてきました。

Toshiya Hasegawa さんのコメント...

> のもおさん

コメントありがとうございます.

| Twitterも始めましたので、あとでフォローさせてもらっていいですか?
もちろんですとも.

いろいろありますよね.
お互い,2010年はいい年にしましょう.