2015年4月20日月曜日

君は LOVE ME TENDER を聴いたか? [music]





2015年4月19日日曜日

GTD (Getting Things Done) - やると決めたことをやるのは,意志の問題ではなく,スキルである [lifehack]

仕事でもプライベートでも,様々な「やること」がありますよね.これらをきちんとこなせるかどうかは,意志が強い・弱いということよりも,「こなし方のスキル」を知っているかどうかに寄るところが大きいのではないでしょうか.

私自身,もう8年ぐらい GTD を実践していますが,知れば知るほど奥が深く,いまだに新しい発見があるのが GTD です.今回は,そんな GTD の私的メモを綴ってみたいと思います.


【GTD とは?】

"Getting Things Done" の略で,デビッド・アレンが提唱する,「やることをこなす」為のテクノロジーです.ハッカー文化におけるライフハックの1つとされ,仕事が複雑化し割り込みが多い近年の頭脳労働者には適さないという理由から,優先順位や計画を強調する従来のタイムマネジメント手法を否定しています.

頭の中で「やるべきこと」を考えないのが要点であり,アレンの言葉を借りれば,

頭は,クリエイティブなアイデアを創造する為にある.
それらを管理・蓄積する為ではない.

ということ.「あれもしなくちゃ」「これもしなくちゃ」という焦りを頭の中で空回りさせるのではなく,いかに素早く「やること」を頭の外に追い出し,自動運転させるかに主眼を置いたテクニックです.


【GTD を簡単に紹介】

とても「簡単に紹介」できるものではありませんが,少しだけ解説してみます.

GTD では,
1. Capture (収集)
2. Clarify (処理)
3. Organize (整理)
4. Reflect (レビュー)
5. Engage (実行)
のステップで,「頭のモヤモヤ (Stuff)」を扱います.

多くの人が非効率な処理をしてしまっているのは,この5つのステップを混同し,いくつかを同時にやろうとしている為 (特に「収集」しながら同時に「処理」「整理」しようとしている),あるいは5つのステップを全て同じ方法やツールで行わなければいけない思っている為,と説いています.

第1ステップの Capture (収集) では,素早く「モヤモヤ」を頭の外の「インボックス」に追い出します.その為には,それを可能とし,信頼できるツールを確立すること (別に紙とペンだって良い),またその過程で処理や整理を同時にやろうとしないこと.

第2ステップの Clarify (「処理」と訳されていますが個人的には「明確化」の方が適切だと思います) では,体裁を考えず素早く収集した「モヤモヤ」について,その正体は何なのか,本当にやるべきことなのかどうか,明確にします.

留意点は3つ.
- いちばん上のものから処理していく (優先度を否定)
- 一度に1件ずつやる (マルチタスクを否定)
- インボックスに戻さない

下のフローチャートでもう少し詳しく説明します.

第3ステップの Organize (整理) では,第2ステップで明確になった「やること」を整理します.シチュエーションごとに整理するのが秘訣で,例えば「仕事」「プライベート」というカテゴリーで整理するのではなく,「自宅」「職場」といったコンテキストで整理するのです (職場でプライベートのことを処理した方が良い場合もあるでしょうし,自宅にいる時は「職場タスク」は全て無視できる).

こちらも下のフローチャートでもう少し詳しく説明します.

第4ステップの Reflect (和訳の「レビュー」では意味が軽すぎる.「向き合い」や「自己との対話」というニュアンスでしょう) では,「何も見落としていない」という自己への自信を持ち,システムを更新します.

第5ステップは Engage です (この「実行」という和訳は完全に間違い.後述します).実は第1-4ステップは,壮大なネタ振りであり,第5ステップでは「直感を信じてやるだけ」とアレンは言っています.第4ステップまでを正しく実行してきたのであれば,自分の直感に自信を持つことができるはずだと.


ここで有名な,GTD フローチャートを紹介します.



「頭のモヤモヤ (Stuff)」に対して,まず「アクションを起こせるかどうか」を考えます."Maybe" は "No" です.

No であれば,Trash (捨てる,忘れてしまう),Someday/maybe (いつかやる/多分やる),Reference (行動が伴うものではなく,必要な時に参照するような情報だった) のどれかに分類します.重要なのは,勇気をもって捨てること.及び,「いつかやる/多分やる」は「後で考える」とは違うことです (後者はただの先延ばしです).

この後 Yes に進むのは全て「アクションを起こせるもの」ということになりますが,次に,その対象に対する「最初に取るべき行動 (Very next action) は何か」を考えます.そしてその最初に取るべき行動1つで,その対象をコンプリートできるかどうかを考えます.

No であれば複数のアクションを要するということなので,それは「プロジェクト」として別途定義します.

Yes であれば,「2分以内に終わるかどうか」を考えます.Yes であれば,何も考えずにすぐその場で実行.

No であれば,「自分がやるのが一番適切かどうか」を考え,No であれば適切な人に渡して「ウェイティングリスト」に載せます.

Yes であれば,特定の日付にやるものかどうかを考え,Yes であればカレンダーに載せてその日まで気にしない.No であれば,シチュエーションごとに,例えば @職場,@自宅,@PC,@電話 といった具合で整理します.

もしこのエントリーで,1つだけ覚えるとしたら,ぜひ 2-minute rule を覚えて実践して下さい.「2分以内に終わることは,あれこれ考えずにすぐその場で実行」を心掛けるだけで,世界が変わります.2分でいかに多くのことが終わるか,驚くことになるでしょう.


【GTD のポイントと本質】

私が考える,GTD の2つのポイントと,1つの本質を述べます.

ポイントの1つは,フローチャートの中にある Trash,すなわち勇気を持って捨てることです.私達は,必要以上に多くの「やるべきこと」を自分に課しているのではないでしょうか.

フローチャートの最初のステップは,「アクションを起こせるかどうかを考える」でしたが,アクションを「起こすべきかどうか」「起こさなくても困らないか」ぐらいで考えても良いかもしれません.

「どれぐらい捨てるべきか」は人によって当然違うでしょうが,ここではあえて定量的に,「8割を捨てる」ぐらいの気構えを持ってみてはどうでしょうか.頭の中を駆け巡る「モヤモヤ」のうち,本当に重要なことって2割ぐらいだろ.

もう1つのポイントは,next action の考え方.それは本当に,目的に近づく為に適切な next action でしょうか? 例えばアレンは,会社で何かを決める必要があった時に,「決める為のミーティングを設定する」は next action ではないと明言しています.


そして私が考える,GTD の最大の本質は,第5ステップの "Engage" にあります.「実行」と訳されてしまっていますが,engage とは本来,「愛着」「約束」「思い入れ」「絆」「繋がり」のような意味です.婚約するという意味もあるので,要はそれぐらいの愛情と約束を誓う言葉であると解釈して下さい.

GTD を「生産性アップ」というキーワードで語る人もいますが,個人的には「仕事,大切な人,健康などといったものに,engage する手法」だと捉えています.

GTD が,ただの効率化手法であれば,私はここまで陶酔していないでしょう.と言うか,計画通りにモノゴトが終わったからといって,一体どんな良いことがあるというのだ.くだらない.むしろ私は,計画的な人生など,大嫌いである.

例えば子供と遊んでいる時に,「オムツが少なくなってきたんだった,買いに行かなきゃ」とか,「来週には入園式だからあれとこれを準備して…」などと思い出すと,「ああ,私って子供のことを良く気にかける親だ」という実感を持つかもしれませんが,それは錯覚です.子供のことではなく,やることを気にかけているだけだからです.子供の為には,純粋に子供と遊んでいる時間に engage することが一番であり,GTD はそれを可能にする手法なのです.

アレンが,lynda.com のインタビューで語っていた内容です.

Getting Things Done (GTD) は,getting things done (モノゴトを終えること) のことではない.あなたの大切なものに,適切に engage することである.

"Engage" とは,ハードワークをすることではない.時には,ただ座って瞑想し,自分と向き合うことも engage かもしれない.頭の中が心配事だらけでは,そんなピースフルな瞑想をすることも難しいだろう.

「やるべきこと」から自由になり,クルーズコントロール (自動運転) させよう.頭の中が空になれば,あなたは直感を信じることができるようになる.

頭の中の空いたスペースは,クリエイティブな創造に,あなたの人生にとって本当に大切なことを考えることに,あなたの愛する人を考えることに,使おう.それらと接している時に,うわの空になるのではなく,engage しよう.



【もう少し詳しく知りたければ】

本質は上に述べた通りですが,実際のやり方については,この辺りが分かりやすいでしょうか.

GTD歴6年目の私が、これ以上ないくらい丁寧に解説します【総括】
生産性アップの金字塔「GTD」の理念をおさらい
【翻訳】15分で分かるGTD – 仕事を成し遂げる技術の実用的ガイド


【さらに詳しく知りたければ】

やはりデビッド・アレン自身による本を読まれるのが一番です.

4576082116はじめてのGTD ストレスフリーの整理術
デビッド・アレン


4576101714ひとつ上のGTD ストレスフリーの整理術 実践編――仕事というゲームと人生というビジネスに勝利する方法
デビッド・アレン


4576060732ストレスフリーの仕事術―仕事と人生をコントロールする52の法則
デビッド アレン



【Leo Laporte が GTD について語ったこと】

余談になりますが,Leo Laporte が,彼のラジオ番組 "The Tech Guy" で GTD に触れた内容が,非常に興味深かったです.特に「To-do リスト管理に凝り過ぎると本末転倒になる」というのは,本当に耳が痛かった.

私も,「実際にやること」よりも「タスクを管理すること」に躍起になってしまいがちな時期があったので,その時は「2分ルール」に加えて,「3時間ルール」というのを勝手に作って実践していました (3時間以内で終わる仕事は,整理する前に取りかかってしまう…つまりほとんどの仕事ですが).

2010年8月の The Tech Guy の,1:21:25から1:35:28あたりまでの,約15分間です.以下に要約します.

・Leo の言葉で,GTD とは
 ・「やること」をクイックに頭から取り除き,
 ・その分,頭はクリエイティブなことに使いつつ,
 ・「やること」は信頼できる場所に保管し,
 ・それらと適切なタイミングで向き合い,
 ・適切な時に適切なアクションが取れるようになること

・やることの優先順位
 ・「緊急度」でつけるものではなく,
 ・それをやった時にもたらされる「価値」でつけるべき

・GTD で陥る失敗の1つは,管理に凝りすぎてしまうこと
 ・「実際にやること」よりも「やることを管理すること」に躍起になってしまう
  ・実際にやらずに,「それをどうやってやるか」ばかり考えている
 ・特にギークタイプの人は,何でもこねくり回したがる
  ・まさに「策士策に溺れる」

・ツールもソフトウェアも,問題は解決しない
 ・問題を解決するのは「あなた」
 ・「あなた」にとって使いやすいツールが,ベストツール (例えそれが紙とペンであっても)
 ・ツールは,それを使う人以上には,頭よくならないもの

・「やることリスト」は,自分や他人に対する「約束」と考える
 ・人との約束は,守るもの
 ・GTD とは約束を守る為の手法


「ところで Leo Laporte って誰?」という方は,この辺りをどうぞ.
Peace Pipe: "The Tech Guy" って知ってる? [memo]
Peace Pipe: So you go ahead and do it - Leo Laporte [memo]


【さらに余談】

さらに余談ですが,私は RTM (Remember the Milk) というツールを使ってタスクを管理しています.もし良いツールを探しているのであれば,試してみる価値はあるかもしれません.
Remember The Milkは、こんなことができます...
Remember The Milk 日本版 公式ブログ » Remember The Milkで快適GTD
Peace Pipe: Remember The Milk で便利な21の検索 [lifehack]

今ではサンフランシスコに拠点を移し,500万ユーザーを越えるサービスになった RTM ですが,まだオーストラリアで2人で開発していたスタートアップの頃に,創業者に会ったことがあります.
Peace Pipe: Remember The Milk ハッカー (と猿) とのランチ [diary]


【いろいろ長々と書きましたが】

GTD は,大きな人生のゴールから,毎日のメール処理まで,様々なレベルに適用できるテクノロジーです.一番の効用は,澄みきった頭と心を手に入れ,本当に必要なことに engage できるようになることです.もし興味があれば,「2分以内に終わることはすぐその場で実行」ルールからだけでも,実践されてみてはいかがでしょうか.


2015年4月18日土曜日

資産運用をしないということは,資産運用をしないという投資をしている [memo]

最初に結論を書いておくと,私は,全ての人が株で儲けることを考える必要はないと思いますが,全ての人が資産運用を考えるべきだとは思います.


ここで1つ問題です.
あなたの手元に100万円あったとします.あなたは,この100万円を,家の金庫にしまっておきました.10年後,この100万円は,いくらになっているでしょうか? (金利はここでは考えません)

答えは,必ずしも100万円ではありません.
物理的には当然100万円ですが,価値としては100万円かどうか分からないのです.

今日,キャベツが1玉1万円だと仮定すると,100万円で100玉買えます.10年後,インフレによりキャベツが1玉2万円になっていれば100万円で50玉 (今日の価値で50万円).デフレにより1玉5千円になっていれば100万円で200玉 (今日の価値で200万円).

つまり10年後の物価が今日とまったく同じでない限り,この100万円の価値は,100万円ではないのです.例え物価が変わらなくても,最近で言えば消費税の引き上げは実質的な物価上昇ですし,資産を「日本円」でしか保有していない人は,昨今の円安で被害を被っているわけです.

もちろん上記は,話を極端に単純化した例え話です.
この100万円は実際のあなたの資産,キャベツはあなたの子供が大学に行く時の入学金などに,置き換えて下さい.

ですので,少なくとも景気に沿った資産運用は全ての人が選択肢として持ち,その為の基礎知識は身に付けておくべきだと考えるのです.


以上を踏まえて,本を3冊紹介します.
この順番で読まれることをお勧めします.



4532191424経済ってそういうことだったのか会議 (日経ビジネス人文庫)
佐藤 雅彦・竹中 平蔵

経済というものを,とても分かりやすく解説した1冊です.

こちらでレビューしています.
Peace Pipe: 経済ってそういうことだったのか会議 - 最低限の経済知識を身につけておく為に [book]

「お金の正体」「株」「税金」といった基本的な概念からはじまり,「アメリカ経済」「円・ドル・ユーロ」「アジア経済」といった話に発展し,終盤では「投資と消費」「起業とビジネス」「労働と失業」といったところにまで踏み込んでいます.

(中略)

好むと好まざるとに関わらず,我々の生活は,経済の仕組みの上に成り立っています.

もちろん経済のことが分かったからといって生活が向上する保証などありませんが,何か得体の知れないモノが生活の基盤としてあるよりは,納得感をもって毎日を送ることができるでしょう.



4478600538なぜ投資のプロはサルに負けるのか?― あるいは、お金持ちになれるたったひとつのクールなやり方
藤沢 数希

タイトルが釣り気味なので Amazon 上には微妙なレビューもポストされていますが,私には,「ファイナンス」の要点が,とてもよくまとまっている本に思えました (著者のブログの焼き直しではありますが).

マネーの世界の様々な側面を紐解いた上で,
- リスクとリターン,リスク・プレミアム
- 金利,現在価値と将来価値,ディスカウント・レート
- 金融商品の価値計算方法
- 市場の効率性
- 現代ポートフォリオ理論
…といった概念を解説し,最後に投資の実際について具体的に触れています.

どんな資産運用テクニック本を読むにしても,まずその前にこの本を読んで,上流の考え方を理解するのが良いと思います.著者は,あの恋愛工学を提唱している藤沢 数希氏で,少しクセのある文章ではありますが,それさえ我慢できれば良書です.


4426118670内藤忍の資産設計塾【第4版】 (豊かな人生に必要なお金を手に入れる方法)
内藤 忍

さらにもう1歩踏み込むとしたら,こちら.現在第3版まで出ていますが,2015年5月に第4版が出版されるので,今なら1ヶ月待って最新版を買った方が良いでしょう (上記リンクは第4版の予約注文ページです).

- 資産設計を始める前の7つのマインドセット (心理編)
- 資産を殖やす7つのセオリー (理論編)
- 個人投資家が使える11の金融商品 (知識編)
- 実際に運用するための6つのプロセス (実践編)
- 資産設計をさらに充実させる9つのポイント (応用編)
と,様々な角度から,体系的にまとめています.

知識として知っておく分にはとても有益ですが,全ての人がこの本に書かれている内容を駆使するほど,投資をする必要はないと思います.



最後に,私なりの考えを書いておきます.
あくまで私の方針とケースであり,他の方に推奨するものではありません.

私の場合は大前提として,
(1) 積極的に儲ける為に投資をするのではない
(2) 人生で一番価値のある資産は時間
という信念があります.

(1) について.
株で一儲けしようという方は,ここに書いたことに賛成・反対される以前に,そもそも私とは,見ている世界が違う方です.もしお金を儲けたければ,株以外に有効な手段があるというのが私の主張であり,それは地道に働くことです.

ギャンブルの世界では,「勝つこと」より「負けないこと」が鉄則とされています.そしてギャンブルには,「絶対に負けない方法」が存在します.それは,やらないことです.私にとって,アクティブ運用や FX は,ギャンブルなのです.

私は,誇りをもって今の会社に勤めていますが,他にも,働いてみたいと思う魅力的な企業は世界にたくさんあります.実際には,何社も同時に働けるわけではない.ですが社員という形ではなく,株主という形で,企業の一員となることはできる.「働いてみたい」と思えるほどクールな企業の一員として,応援をするというか,大袈裟に言えば少しだけ運命を共にする…それこそが私にとって株の本質であり,私が個別銘柄を買うとしたらそんなモチベーションです.

(2) について.
投資にかける時間は,最小限にしたい.全ての投資の中で一番リターンが大きいのは「自己投資」であり (一説には利回り25%から40%),頻繁に株価をチェックするなら,その時間で本を1冊読みたい.この理由からも,私はインデックス運用を基本としています.


具体的には,生活費の数ヶ月分を手元に置いておき,余剰金は住宅ローンの繰上返済に当て,子供の学費や修繕費など将来必要になると予想される費用,及びその他の資金を,国内 ETF,先進国・新興国インデックスを基本として,いくつかの金融商品に分散して積み立てています.少し説明しますね.

まず,生活費の何ヶ月分を手元に置いておくかは,本業のリスクに応じて変わってきますが,3ヶ月程度が一般的と思われます.マックスを6ヶ月として,「明日仕事が無くなったら,次の仕事に就くまでにどれぐらいかかるか」という観点で決めれば良いと思います.

また,「借金がある時は,投資をするより借金を返済する」というのは通説で,住宅ローンも借金に含まれます.最近の住宅ローン金利水準を考えると,繰上返済をするより株式投資をした方がリターンが大きそうですが,借金返済はリスクの無い確実な運用であり,費やす時間やエネルギーまで含めたコスト対効果で考えれば,私は現状においても繰上返済の方が得策だと考えます.

資産の分散は運用の肝ですが,最適なアセットロケーションは人によって異なります.外資系企業に勤めていて報酬の一部を外貨建ての自社株で受け取る人と,国内でビジネスをする自営業の人と,市場の株価が報酬に直結する証券マンでは,それぞれ戦略がまったく異なるはずです.年齢や家族構成,資産や収入,プランとゴール,性格やライフスタイル,許容できるリスクなどから,最適な分散方法を導きます.


冒頭に示した通り,私は全ての人が運用を考えるべきというポジションです.「数百万未満であれば,運用するのは時間のムダ」という言葉をよく聞きますが,例え少額でも,金融市場に手触り感を持っておくことは,意味のある行為だと思います.但し,ゴール設定もなく漠然と,「なんとなく増やしたい」というやり方は避けたいところです.


2015年4月15日水曜日

新しい技術を3日でマスターできなかったら負けだと思え [reflection]

もう今から8年も前のエントリーですが,当時読んだ時から今まで,そしてきっとこれからも,心に強く残っている言葉があります.小飼 弾さんの,こんな一言です.

私自信、新しいプログラミング言語を3日でマスターできなかったら負けだと思っている。

404 Blog Not Found:書評 - 受験勉強は役に立つ



例えば有名大学を出ているからといって,社会に出てからも優秀とは限りません.受験勉強と違い,社会に出てからは,時間をかけて行う暗記や知識量に価値はないからです.

また,学生の頃は,10問中9問正解すれば90点が取れますが,社会ではその逃した1問のせいで,ビジネスが破綻することもあります.

社会に出てから解くテストとは,

ここに100問から成るテストがあります.1問にかかる時間は1分,但し制限時間は40分です.つまり与えられた時間全てを問題解決に費やしても,解けるのは最大40問です.

配点はバラバラで,1問1点の設問もあれば,1問10点の設問もあります.さらに100問のうち3問はマスト問題で,これらには全て答えなければいけません.マスト問題を1問でも逃すと自動的に0点になります.

設問の配点と,どれがマスト問題なのかは事前に知らされていません.制限時間のうち適切な割合を使って,適切なプロセスでそれらを見極めて下さい.

…みたいなものではないでしょうか.


技術やトレンドの移り変わりが激しい昨今,「知らない」ということは理由にならず,むしろ知っていることは古いことであり,知らないことをいかに早くマスターするか,いかに早く入力しつつ整理された状態で出力するか,みたいなことが重要です.


ここで,ラーニング・カーブ (習熟曲線) というものを考えてみます.

何か新しいことをマスターする際,時間と共に習熟度は上がっていくとしましょう.




実際には上のような単純な直線ではなくて,最初は立ち上がりが遅く,その後に成長が加速し,ある程度の所で鈍る,という「S字カーブ」のような曲線の方が,現実に即しているかもしれません.




ここまでが一般的に言われるラーニング・カーブです.
さてこの後はどうでしょうか.

成長が鈍ると,いわゆる「壁」にぶち当たることになります (下図 ★a).

ぶち当たった壁は,見方を変えれば,成長の機会 (learning opportunity) です.ここで手を抜かずに,必死に勉強するとか,例え相手が年下でも余計な恥やプライドを持たずに教えを乞うとか,不恰好にもがいてでも何とかくらいついて成長機会をモノにすれば,一時的には落ち込んでも,またS字カーブの成長サイクルに突入できる.この繰り返しが,ラーニング・カーブの本質ではないでしょうか.




惰性で仕事をしている為にこの成長機会 (★a) に気付かない,あるいは気付いているのに,壁から逃げたり手を抜いたりしていると,例えその次の成長機会 (★b) をモノにしたとしても,最初の成長機会を乗り越えた人 (点線) と比べて,p の分だけ差がついてしまう.




10年,20年というスパンで考えれば,この差の積み重ねは,歴然となっていきます.

そして成長機会を逃さず,自己投資を重ねて,社会に出てからの勉強のやり方を肌感覚として身につけた人にこそ,「新しい技術を3日でマスターできなかったら負け」と,サラっと言えてしまうのだと思います.

ずっと自分の得意分野だけで仕事ができることはなく,常に新しいことを吸収する必要がある.

その時に「あれもこれも,覚えることが沢山あって大変!」…ではなく,まだ自分が知らないスキルを覚える前から,それは完全に体得できる前提で,それをどう使うかに最初から頭が切り替わっている.優秀な人とは,そんな人だと思います.


この季節になると思い出しますが,ちょうど2年前の今頃に転職を決意し,その2ヶ月後には現在の会社でのキャリアをスタートすることになります.この2年間,様々な新しいチャレンジがありましたが,冒頭の弾さんの言葉は,1つの拠り所だったように思います.

新しいこと,知らないことは,理由にならない.
壁にぶち当たったらチャンスと捉え,成長機会を逃さないようにと,改めて自身に言い聞かせると共に,これからもリミットをかけずに,新しい領域にチャレンジしていく所存です.