2012年7月18日水曜日

経済ってそういうことだったのか会議 - 最低限の経済知識を身につけておく為に [book]

経済ってそういうことだったのか会議 (日経ビジネス人文庫)

正直に言って,私には経済というものがよく分かっていません.
そんな経済に疎い人間に一番オススメの本と言われて,読んでみました.

本書は,「ポリンキー」「ドンタコス」「バザールでござーる」などのヒット CM や「ピタゴラスイッチ」などのテレビ番組企画を手掛け,「だんご3兄弟」の生みの親としても知られるメディアクリエーターの佐藤雅彦氏が,過去に経済財政政策担当大臣,金融担当大臣,総務大臣などを歴任した経済学者の竹中平蔵氏に質問をするという対話形式により,経済の様々な概念を紐解いていくもの.

「お金の正体」「株」「税金」といった基本的な概念からはじまり,「アメリカ経済」「円・ドル・ユーロ」「アジア経済」といった話に発展し,終盤では「投資と消費」「起業とビジネス」「労働と失業」といったところにまで踏み込んでいます.

佐藤氏の率直な疑問の切り口が秀逸であり,それに対する竹中氏の解説は素晴らしく明瞭.またそれをさらに佐藤氏が,人気クリエーターの本領発揮と言わんばかりにキャッチーな言葉で咀嚼し,全体を通してとことん分かりやすい内容になっています.

第1章: お金の正体 - 貨幣と信用
第2章: 経済のあやしい主役 - 株の話
第3章: 払うのか 取られるのか - 税金の話
第4章: なにがアメリカをそうさせる - アメリカ経済
第5章: お金が国境をなくす - 円・ドル・ユーロ
第6章: 強いアジア、弱いアジア - アジア経済の裏表
第7章: いまを取るか、未来を取るか - 投資と消費
第8章: お金儲けはクリエイティブな仕事 - 起業とビジネス
第9章: 人間とは「労働力」なのか - 労働と失業
終章: 競争か共存か


例えば通貨の話.
ヨーロッパは,車でちょっと走ればもう隣の国です.ならばなぜ日本でも,大阪と東京と札幌で違う通貨を使わないのか (実際,江戸時代の日本は江戸と浪速で違う貨幣が流通していたのだとか).そのヨーロッパの国々は,なぜ独自通貨を捨てて「ユーロ」に通貨統合したのか.なぜパナマは,自国のお金を発行せずにアメリカ・ドルを通貨としているのか.

…考えてみれば不思議ですよね.

株や税金にしてもそうですが,当たり前のように受け入れているけど,なぜそうなっているのか,実は分かっていなことばかり.経済ってそんなものではないでしょうか.


学生時代に経済学の授業を受けたり,会社でビジネスモデルの研修を受けたり,少しは国内外の経済動向に注目しているつもりの私ですが,どうにも経済がとっつきにくいものであったのは,理詰めでそれを理解しようとしていたからだと思い知らされました.

一方で本書は,背景や社会との結びつき,人間の行動や欲求,その国の文化や歴史などを交えて経済を解説しているからこそ,するすると身体に入ってきたのです.


大袈裟に言ってしまえば,経済とは,人間を理解することかもしれません.

人間という生き物は本能だけで生きる動物と違い,システムやプロセスといった多くの約束事を作ってきました.そんな人間社会の歴史において,必要性から生まれ,必要性から現在の形に姿を変えてきた経済.人間が,どこから来て,今どこにいて,これからどこに行くのか…その集大成が経済なのかもしれません.


好むと好まざるとに関わらず,我々の生活は,経済の仕組みの上に成り立っています.

もちろん経済のことが分かったからといって生活が向上する保証などありませんが,何か得体の知れないモノが生活の基盤としてあるよりは,納得感をもって毎日を送ることができるでしょう.

予備知識なしに,肩の力を抜いて読み進めることができる本,経済に詳しい方にとっても詳しくない方にとっても,経済を身近にしてくれる本.文字通り「経済ってそういうことだったのか!」と言うこと請け合いの1冊です.

共同体のあり方 -

経済学は、利己的な利益の追求を理論づけるだけの学問だと思っていた僕は、その言葉に少なからぬ感動さえ覚えてしまった。

我々が、個人としてだけではなく、みんなでどのように生きたらみんなで幸せになることができるのか。それを発端とする学問がオイコノミコス、つまり経済学の始まりだったのだ。

-- 佐藤雅彦 (序章「こうして会議は始まった」より)


4532191424経済ってそういうことだったのか会議 (日経ビジネス人文庫)
佐藤 雅彦 竹中 平蔵


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