2010年11月7日日曜日

Because we wanna make the best product in the world for customers - Steve Jobs at D8 Conference [memo]

前エントリー で紹介した,D5のスティーブ・ジョブズとビル・ゲイツの共演に引き続き,D8のスティーブ・ジョブズのビデオを観た.こちらは今年の6月と割と最近の内容で,ジョブズの単独インタビューである.
Apple CEO Steve Jobs Live at D8
Steve Jobs at the D8 Conference (Podcast)

D5におけるゲイツとの共演では友好的な一面を見せていたが,こちらでは非常にトンがった,いつもの「ジョブズ節」を披露している.良い意味で大人気なく,自分の主張をまくしたてるのだ.

例えば「Flash に対応しないことは,ユーザーにとってフェアなのか?」という質問に対して,
・(全てのことはできないので) 注意深くやることを見極めている
・Flash は廃れていくだろう
・これからは HTML5 だ
…といった理屈を述べた後,

(アドビに対して) Flash を速くできたら俺のところに持ってこいと伝えたけど,その後来ちゃいないよ.

(ブラウザが Flash 非対応の為に穴が空いている個所は) どーせ広告だろ?

と吐き捨て,「(Google の Android について) 裏切られたと思うか?」という質問に対しては,

My sex life is pretty good.
How is yours?

という回答.もうやりたい放題である.

他にも「Apple は検索はやらない」と明言したり,iPhone よりも先にタブレット (iPad) を開発していたと告白したり,iPhone4 流出事件や Foxconn での従業員自殺に対して見解を示すなど,内容は多岐に渡る.その中で個人的に興味深かった点を以下に挙げておく.

【プラットフォーム戦争】
「これまでは OS がプラットフォームだったが,Android はプラットフォームだし,ブラウザもプラットフォームと言える.ソーシャルグラフの観点では Facebook だってプラットフォームだ.それについてどう思う?」という質問に対して

そんな風には思っていない.
マイクロソフトとも (かつて) プラットフォーム戦争をしたとは思っていない.

(ジョブズの回答よりもインタビュアーの質問が鋭かった)

【コンシューマー・マーケット】

コンシューマー・マーケットはコンシューマーが yes か no かを告げる.
非常にシンプルで素晴らしい.
エンタープライズ・マーケットではそうはいかない.


【出版業界】

新聞は非常に大切だ.
既存の出版メディアに対しては,どんな協力でもする.

(個人的には意外な発言)

【タブレットはノート PC を置き換えるか】

農業が中心だった頃は,「車」と言えば「トラック」だった.
現代でもトラックは走っているが,一部の人が特定の目的に使っている.

PC も,つまりトラックだ.
今はみんな使っているが,いずれは一部の人が特定の目的に使うようになるだろう.


【Apple の経営】

Apple には「コミッティー」というものがない.
地球上で一番大きなベンチャーのようなものだ.

権力や役職ではなく,アイデアで勝負しなければいけない,
ベストアイデアが常に勝つようにしている.


【次の10年】

考えられる最悪の事態は,我々が自分たちの価値観を曲げてしまうことだ.
そんなことをするぐらいなら辞める.

信じるものは昔から変わらないし,これからも変わらない.


【テレビ】

テレビ産業は,(STB を無料で配るなどして) 契約で儲けるモデルになっていて,参入しにくい.

新しい参入策が無い限り,やるつもりはない.

(ジョブズは「やらない」と言ったことを過去やり続けてきているので,テレビもやるのかも?)


とにかく,ブレない.揺るがない.

そして根底にあるのが「ベストな製品を作ること」というのが一番印象的だった.自らの主張を正当化している根拠が,常にそれなのだ.

幾度となく「ベストな製品を作ること」と繰り返していたが,それを言う時は,こんな調子でいつも力がこもっていた (下のビデオの2分45秒あたりから.そのポイントからリンクしています).



Because we wanna make the best product in the world for customers

-- Steve Jobs


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