Sunday, March 30, 2008

ネットと家電のキャズムを超えろ! [ce]

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3日前の話になるが,愛読しているブログ,キャズムを超えろ! の和蓮和尚さん (元松下電器のネットサービス部門事業企画,現ネット家電開発ベンチャー代表) が主催する「ネットと家電のキャズムを超えろ!会議」というものに参加してきたので,遅ればせながら簡単にレポートしておきます.

『ネットと家電のキャズムを超えろ!会議』第1回は3/27夜。参加者募集開始 - キャズムを超えろ!

ネット業界と家電業界、合わせるととっても面白くて便利な家電が出てくると思うのだけれど、どうしてうまくいかないんだろう?という疑問を持たれた方はWeb業界・家電業界にいる方に限らず、少なくないはず。

まずは「便利で楽しいネット家電が世に出てほしい」という想いを持った人たちが集まって、現状を共有したい。さらに同じ想いを持った人たち同士で交流することで、家電がネットとシームレスに連携する楽しい世の中に1歩近づければいいなと考えるに至ったわけです。

そこで『ネットと家電のキャズムを超えろ!会議』なるものを開催することにしました。

--中略--

■ 第1回のテーマ
テレビのネット接続機能で何かが変わる、か!?

まぁベタベタなテーマですが、YouTube接続TVやらアプリキャストやら、はたまたB2BではPTP社の"Spider"など面白いハード&ネットサービスのコラボレーションがでてきつつある今日この頃。今一度このテーマを見直してみたいと思う次第です。個人的に注目しているのはYouTubeやニコニコ動画をTVで見るというスキームではなく、ネットを補助的に使って「テレビ放送をもっと楽しむ」方法と、テレビという大画面をうまく使ってネット上の情報(YouTube等ショートクリップ動画に限らない)を活用する方法です。

■ 概要
ネットにつながるテレビやSTBが発表、発売されはじめたけれど、レスポンスの問題や表示できるコンテンツの種類、果てはUIがまだまだこなれていなかったりなど、駆け出し感が否めない。 とはいえネット×TVというテーマは確実に動き出している。今後ネット対応TVは一体どんな方向へ向かうのか、対応するネットサービスはどんなものが登場し、どういった収益モデルの可能性があるのか? など議論は尽きない。

第1回となる今回はネットサービス側の方としてメタキャストの井上氏、家電メーカー側の方としてソニーのテレビ「BRAVIA」に搭載されたネット機能"アプリキャスト"の関係者にお越しいただき、思うところをざっくばらんにお話いただきながら、会場の皆様といっしょにネットTVの未来を考えてみたいと思う。

■ ゲスト
・井上大輔氏
株式会社メタキャスト代表。テレビ番組単位にメタデータを集約するサービス(テレビブログ)をはじめ、PCで録画したテレビ動画にネット上にあるメタデータを自動付与して管理するソフトウェア(TAGIRI)を提供。最近ではネット動画の視聴履歴をベースとしたコミュニティーサービス(Mitter)や検索エンジン(SAGURI)を展開中。

・岡本直也氏
ソニー株式会社コンスーマープロダクツグループUIセンター ホーム次世代UI開発部にて、ソニーのテレビ「BRAVIA」のアプリキャスト機能の開発を担当。アプリキャストはTVを見ながら使えることや、acTVilaのWalledGardenモデルから1歩先に進もうとした意欲的機能として家電業界・ネット業界の注目を集める。


まず,メタキャストの井上さん,ソニーの岡本さん,そして告知はされていなかったが当日飛び込みゲストとして登場した UI Evolution Japan の鈴木さんと,3人とも身元を明かしてのゲスト参加だったが,発言はすべて個人的なものであり,会社を代表してのコメントではないということをお断わりしておく.

テーマとしては今まで散々議論されてきた内容だが,あまりテーマに固執せず場の雰囲気で話題が変わっていく進行で,非常に楽しかった.

やはり岡本さんが話が上手かったこと,そして和蓮さんのファシリーテーション能力が非常に高かったことが印象に残っている.

ところで,Web 開発系の分野ではこのようなセミナーや勉強会がたくさんある.GREE Labs の「オープンソーステクノロジー勉強会」をはじめ私もいくつか顔を出させて頂いているが,畑の違う方々の話を聞いたり交流するのは別の楽しみがあるものの,やはりどうしても「アウェイ感」がある.それに対して今日は家電の話であり,「リモコンボタンの場所争奪戦争」の話や「家電の開発現場ってどんな感じなんですか?」という質問など,私にとっては日常的な話が多く,個人的にはとても「アットホーム」な会だった.ぜひ第2回目も期待したい.

結論としては,「家電のモノ作りってやっぱめちゃくちゃおもしろいじゃん!」ということを再認識した1日だった.


以下,当日の内容.



まずは和蓮さんから前提の整理.

今日のコンセプト
- 面白いものを触って・知って・咀嚼する場
- 面白い人とコミュニケーションする場
- で,何かが生まれ出る種としたい

キーワード
- ネット x 家電が面白そう
- 「人」が見える家電っていいよね
- 現状と可能性
- 会社を越えたコミュニケーション
- ネガティブは何も生まない

テレビ (STB含む) とネットの連携
- 動画配信系
 - AppleTV (Apple)
 - デジタルテレビ
 - NT1 (Sony)
- 便利系・楽しい系
 - ロケフリ (Sony),SlingBox (Sling Media)
 - アプリキャスト,ブラウザ (アクトビラ)
 - オンデマンド TV
 - Spider (PTP),i-BOX Server (日本電算機)
 - Dimora (Panasonic),ネットdeナビ (Toshiba)
 → 便利系・楽しい系がおもしろい

課題など
- MS とか Adobe とか嫌い? (WMV, FLV)
- Open Internet 上の情報がそんなにお嫌い?
- 何だかもっさりだったり
- UI こなれてなかったり
- EPG データの権利周りとか
- みんな PF 取りたがって規格乱立したり
- ネットユーザー追いてきぼり?

今日のネタ
- 動画配信だけがネットと TV の連携じゃないよね
- 今のハードとソフトでどこまでのことが実現可能?
- ユーザー・ネット企業・家電メーカーの立ち位置は?


次に,和蓮さんが途中適宜ツッコミを入れつつの,各ゲストからのショートプレゼン.

【ソニー岡本さん】
ソニーの BRAVIA 2007年モデル以降全機種に搭載されているウィジェットシステム,アプリキャスト の開発を担当した人.

プレゼンも,デモを交えたアプリキャストの紹介・説明に終始したが,彼らしくユーモアを交えながら大いに会場を沸かせていた.特に,最初に「いやーめちゃめちゃ自信があるんですよねー. すごくいいものを作った! ぜひ紹介したい!」と言いながら登場したのがおもしろかった.

余談になるが,以前和蓮さんはアプリキャストについてこんなことを語っている.
ソニーのアプリキャストに感じる閉塞感と可能性 - キャズムを超えろ!

【メタキャスト井上さん】
こちらのイベント
Peace Pipe: テレビ x Web 2.0 = テレビ 2.0 それは未来予想図 [ce]
にもゲストで来ていた人.

井上さんからは「サービス側の立場」として テレビブログTAGIRISAGURI などを紹介.

【UIE 鈴木さん】
会長が Life is beautiful で有名な中島さんの UIE Japan で開発された,ネットから GUI をダウンロードするミドルウェアの紹介.

サーバー側を変更することで,モデルに縛られずユーザーにダイナミックな GUI を提供することができる.実際にデモ基板には,Flash も HDD もついていなかった (つまり firmware からネットで落としてきている).


その後,五月雨式にフリーディスカッション・Q&A (以下要点のみ).

(和蓮)
家電の世界はメモリが非常にシビアで,テレビのメモリと言えば 32MB から多くても 128MBぐらい.きっとこのデモ機 (BRAVIA) はこの範囲の前半の方では?

(岡本)
もともと開発当初「タダで作れ.君たちにくれてやるメモリはない」と言われた (笑) アプリキャストはテレビの他の機能とメモリ排他で動く為,コスト0で実現している.それでもサクサク動くようにパフォーマンスにはすごくこだわった.上司に「半年間黙っておいてくれ」と頼み,使われていない会議室に試作機を持ち込んでこっそり作った.

(和蓮)
僕が松下にいた頃,アプリキャストをはじめて触ってあまりにサクサク動くので驚いた.

(岡本)
いやー松下の人にそれを言わせたかった! (笑)


(井上)
自分が好きなコンテンツが放送されたらアラートしてくれるパトランプがテレビに欲しかった.アプリキャストはまさに画面の中でそれを実現している.

(岡本)
メジャーなものを作ろうとすると,10人のうちの9人を狙わなくてはいけない.でも「100人のうち1人だけど,その1人はめちゃくちゃ好き」というインターネット的なニーズを満たせるフレームワークを作りたかった.


テレビの世界を外にどう見せていくか?

(岡本)
むしろその逆のことに興味がある.「テレビがおもしろくなくなった」などと言われているが,他の楽しみが増えてきただけだと思う.それをテレビが取り込めていない.テレビの外にたくさんある楽しみを,いかにして取り込むか.


(井上)
番組とウィジェットの連動は考えている?

(岡本)
いろいろな意味で難しい.テレビ番組は非常にクリエイティブに,莫大なお金とパワーをかけて制作されている.それを超えるリッチな体験を提供できなければやる意味がない.実装よりも設計が難しいと思う.


アプリキャストを他のハードに載せることは考えている?

(岡本)
アプリキャストは,将来そういうこともできるように JavaScript + XML で設計されているが,最近のネットの考え方ではフロントエンドはハードに合わせて様々なユーザービリティの基に作らることが多いと思う.

(和蓮)
「違うハードで同じ見せ方」というのは,まさにアクトビラの考え方.あれはきっと各社独自のユーザビリティがまったく通用しない.

(岡本)
そう,でも両方のアプローチはあっていいと思う.


それでも Yahoo Widget や Dashboard などをはじめ,規格が乱立するのは好ましくないのでは?

(岡本)
それはその通り.プリミティブな技術のところはできるだけ合わせていくべき.でも僕たちは,それを待つのではなく挑戦したかった.


アプリキャストはなぜテレビにしか載っていない?

(岡本)
別に組織間に壁があるわけではなく,単純に組織が大きいと進みが遅いだけ.横展開は課題.


わざわざテレビ・ネット連携しなくても PC の画面をテレビで出せば良いのでは?

(岡本・和蓮)
PC を繋いだり,ホームネットワークを構築するのと,LAN を繋ぐだけですぐ機能が使えるのとでは敷居が違う.


「テレビの外の世界を取り込む」という話があったが「何を視聴したかを外に出す」という考えは?

(井上)
ぜひほしい.

(岡本)
これも技術的にはできるが,セキュリティ・プライバシーの問題を解決し,適切なユーザビリティとサービス・ビジネスモデル設計をしなければいけない.

(和蓮)
今までもこの話は議論され続けきた.

(岡本)
ようやくピースがそろってきた.アプリキャストもそのピースの1つとなって,パズルの絵が完成すると良いと思う.

(和蓮)
既に HDD レコーダーの中には,ユーザーが何を録画予約したかをサーバーに送り独自の番組ランキングを作っているものもある.

(井上・和蓮)
いやーでもやっぱり「再生率 (視聴率)」がほしい.


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