2008年2月6日水曜日

hulu のお手並み拝見 [ce]

以前,とある人に「ネットワークストリーミングと広告の perfect example」と紹介されたのが,hulu という動画配信サービス.とにかく hulu と Joost は,技術要素から UI まで一通り見ておいた方が良いとのことだった.
http://www.hulu.com/

hulu についてはその時すぐにユーザー登録をしたのだが,まだこのサービスは招待制で,先日忘れた頃に招待状が届いたと思ったら,アメリカでしか見ることができないことを知った.それで,今週は出張でアメリカに来ているので,ようやく hulu を試してみた.

【hulu トリビア】
- NBC と News Corp (Fox) のジョイントベンチャー
 (競合する有力メディアのジョイントということで注目を集めた)
- 15を超える CATV ネットワークと提携
- 大手映画会社4社 (Fox,MGM,Sony Pictures,Universal Studio) の映画も提供
- というわけで,質の高いコンテンツがたくさんある (番組数は見た感じ300近くありそう)
 (24,Prison Break,Heros,Simpsons,The Blues Brothers,Sideways などなど)
- 全て無料,視聴回数制限なし
- サービス運営費は広告収入でまかなわれる
- CM は1エピソードにつき1スポンサー,10分前後間隔に15-30秒の CM が流れる
 (同じ番組をもう1度見ると別のスポンサーになった)
- 画質は良好
- H.264/AVC 1280 x 720 HDTV コンテンツを集めた「HD Gallery」というコーナーあり
- ブラウザベース,(Joost のように) 専用アプリ必要なし

当初は「YouTube キラー」との呼び名が高かったようだが,上記からも分かるように,YouTube はコンテンツを「漁り」に行き「チラ見」する場所であり,そもそも "Broadcast Yourself" というサブタイトルの通り「自分でビデオを投稿して自身が放送局となる」というコンセプトだとするなら,hulu は質の高いコンテンツを「腰を据えて視聴しに行く場所」と言えるだろう.

この,ユーザー生成ビデオを捨て,また iTunes のようなダンロード販売も捨て,純粋に「テレビで見るような番組を無料で VOD 配信する」という切り口は潔い.

使ってみた感想は,「とにかくインターフェースが直感的」という一言に尽きる.なんせ番組のクオリティに付加価値がある為,「はばからない UI (ごちゃごちゃしておらずコンテンツに集中できる)」「でもそれでいて分かりやすく使っていて楽しい UI」を実現しているように思う.さらにそのコンテンツに溺れることなく,TV の置き換えではなく PC で動画を見ることに特化されている.

具体的には,
- 見たいところを自由に選択でき,プログレスバーにはどこで CM が入るか明示されている
- 再生しているビデオ以外のブラウザ画面を暗くして見やすくするボタンがある (これイイ)
- 操作ボタンは CM 中は全て消え,CM を見る以外のことはできない
- もちろん,Full Screen や Pop Out などの基本機能や,メール共有やエンベッド用 HTML などのバイラル機能,プレイリストや視聴履歴 RSS などは普通にある

…と,1つ1つ書くと「ふーん,当たり前じゃん」と思うだろうが,これらのトータルプレゼンテーションが非常にシンプルかつ洗練されている.期待していたような「びっくりする UI」ではなく,逆に「必要とされていること,当たり前のことを,卒なくきちんとやっている」という印象.この手のビジネスモデルは,1つ間違えば CM が非常に鬱陶しく感じ,サイトに戻りたいとは思わなくなるものだが,それはまったく感じなかった (現在こちらの時間では朝の5時だが,こんな時間まで hulu を見ていたのは時差ボケという理由だけではない…).

良い例えかどうか分からないが,トム・デマルコの本を読んで,目新しい概念は何もなくなんとなく分かっていることばかりなのに,「あーそれそれ,俺はそれが言いたかったんだってば.体系立ててまとめてくれてありがとう」と言いたくなる気持ちに似ているというか.

本題とは直接関係ないが,hulu が Ruby on Rails で開発されたというところにも非常に好感を持った.

日本からは見れないと思うが,記念に hulu から Prison Break をエンベッドしておこう.これもビデオの中の好きな部分を選択して,preview しながら HTML を生成できた.


さらに YouTube で,hulu の操作ビデオを発見した.
ビデオを実際に視聴しているところは映っていないが,サイトの雰囲気ぐらいはつかめるかもしれない.




さてさて,実はちょっとした細工をすれば日本からでも hulu は視聴できるようだ.要は,どこからアクセスしているか分からないように自分の IP アドレスを隠してしまえば良いわけで,ここでは詳細に触れないが,ちょっとググれば 簡単に見つかるはず.


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