2007年8月30日木曜日

梅を大切に - 青木淳 [seminar]

もう先週の話になるが,まつもとゆきひろ氏青木淳氏 の講演を聴く機会があった.

私は元々まつもと氏のファンなので,彼の講演を目当てに足を運び,もちろん彼の話は非常に興味深かったのだが,なにより青木氏のプレゼンが非常に上手かったことに感動した.

構成や展開,話のまとめ方,ユーモアのセンス,テンポ,リズム,内容そのもの,そして特に喋る技術,いずれも素晴らしく,ここ最近聴いたプレゼンの中では一番だったように思う.


彼が話した中で印象的だったのは,「梅を大切に!」というもの.
なんでも「サラリーマン」の "salary" というのは "salt" が語源になっているらしく,確かに「敵に塩を送る」なんていう言葉があるように,塩は元来貴重なものとされている.

では「塩梅」という言葉.
エンジニアとして,いい塩梅になるにはどうすれば良いか.

サラリーマンである以上,給料 (塩) は取れるわけだから,「梅」を大切にしようということで,つまり「すっぱさ」「こどもっぽさ」「あおくささ」を持ち続けようというメッセージだった.

はっきり言ってこじつけ以外の何ものでもないのだが,彼の言葉はなんだかするすると体の中に入ってきた.


その後のパネルディスカッションでは,「プログラミングに飽きたことはありませんか?」という問いに対して,まつもと氏は

まったくない.
ご飯を食べることに飽きないのと同じ.

青木氏は

単身赴任している東京のアパートにはテレビも冷蔵庫もクーラーもないが,プログラミングだけは欠かせない.

とのこと.

2人とも筋金入りである.


2007年8月27日月曜日

UI パラドックス [ce]

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消えている文字は「駐車」です.

ここを強調したくて,おそらく赤文字あたりにしたんでしょうが,耐久性まで考えておらず,結局強調したかったところが消えているという,どうしようもない本末転倒ぶり.

そもそも,この文章で強調するとこって本当にそこなのか?

この写真は分かりやすいですが,同じようなことが家電やモバイル機器のあちこちで起きてませんかね.


2007年8月26日日曜日

飲みすぎ [diary]

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Arabababasei Arabababasei
Cuanto te quiero
Arabababasei Arabababasei
Ooh...

-- Desde que Llegaste


2007年8月23日木曜日

今だけだと思うな [diary]

なぜならずっと続くから.

今だけだと思っていることは,この後ずっと続く.
少なくとも,そう思っておいた方がいい.


2007年8月18日土曜日

素人のように考え,玄人として実行する - 金出武雄 [book]


後輩から借りっぱなしになっていた,日本が世界に誇るスーパーハッカーの本.

金出氏は,京都大学で教授を勤めた後,コンピューターサイエンスでは世界トップレベルであるカーネギーメロン大学のロボット研究所の所長にまでなった人である.

彼の名を世に知らしめる研究は枚挙に遑がないが,特に有名なのは "Eye Vision" だろう.これは,周囲に囲んだロボットカメラが適切なタイミングで同時に被写体を撮影し,その映像を繋げることによって,視聴者には映画「マトリックス」のように,まるで時間が止まって周りを飛んでいるように見えるシステムだ.これがなんと2001年のスーパーボウルに採用されたのだ.つまり,全米で1番視聴率を稼ぐイベントで,何千万という一般市民が彼の研究の恩恵を受けたことになる.


「素人発想・玄人実行」とは,何とも素晴らしい名言だと思う.人には誰しも得意分野があるが,なまじっか知識があるが故にその得意分野において「バカ」になりきれず,頭で考えすぎてしまうことがよくある.

本書は,金出氏が単純,素直,自由,簡単な発想をする為に,我々に送る48の lifehacks である.特に「技術書」という位置付けではまるで無く,社会で生きていく為のちょっとしたコツが,非常に具体的に語られている.

例えば,特に私が感銘を受けたものを,タイトルだけいくつか紹介するなら,

3. 成功を疑う
 専門家は,捨てて変える決断力と勇気を

4. 創造は省略から始まる
 どこを端折るかがキー!

6. シナリオのキーは,いかに人や社会の役に立つかである
 よくできる人とできない人の違いは…

7. 構想力とは,問題を限定する能力である
 世の中のすべての問題を最も一般的に解くのは不可能である

11. 「できない」から次が始まる
 科学者が不可能と言った時は,高い確率で間違っている

27. 説得する - 黙っていてはわからない
 アイデアや結果は人に知られてこそ,のものである

30. 説明して納得させるのではない.納得させてから説明するのだ
 複雑な理論でもわからせられる

34. 英会話は「外国人にしてはうまいな」と思われるぐらいがちょうどよい
 最適な英会話の習熟レベル

37. 「起承転結」のコンビネーション
 この4つは「構成要件」であり,かならずしも順序ではない

40. 発表と英語に関する3つの変なアドバイス
 発表はあまり準備しないほうがよい

43. 「自分がどう見られるか」の脅迫観念と存在感
 実際には,他人はまず気づいていない

45. 人を引っ張るリーダーシップ
 西部劇の保安官,時代劇の代官

46. うまくいかない時もある - あっさりと方向転換しよう
 その場所で,その時々にベストを尽くせばよい

47. 評価とは本来主観的なものである
 「客観的」評価の危険性と欺瞞性

48. 「自分が決める」という勇気
 意見のない人間はいらないのだ

といった具合だ.

金出氏はロボティックスの権威ではあるが,エンジニアやコンピューターに詳しい人に限らず,「ある成功体験を納めた人間が,その人の色メガネを通して語るちょっとしたテクニック」と捉えて読める本だと思う.


余談になるが,もともと本書を読むきっかけになったのは,この夏 カーネギーメロン大学を訪問 した時に,金出氏に直接お会いする機会があったからだ.

まるで子供のような好奇心を持った方で,プロジェクタを吊るす為に自分でオフィスの天井に穴を開けたらしいのだが,「計算を間違えちゃってねー」ともう1つ余分に穴が開いているのを笑って話していたのが印象に残っている.

また,非常に人懐っこく,とにかく話好きな方だった.その時も,同僚が

先生は学者として非常に著名でありながら,アカデミックに傾倒することなく,Eye Vision のスーパーボウル導入など実社会における成功も得られていますが,そのコツは何なんでしょうか?

みたいな質問をしたところ,
「いやーあの時は大変でねぇ…」
と,その時のエピソードが延々と続き,最後に元々の質問に対する回答として

ま,たまたまだと思うんだけどね♪

と言われた時には,思わず「うおおぃっ!」とツッコミそうになる自分を抑えるのに必死だった.


2007年8月16日木曜日

朝焼け [diary]

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サンキュ.


2007年8月15日水曜日

ヒロシマナガサキ [movie]

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今日が終戦記念日だからとか,先日テレビで アメリカに原爆被害の賠償金を請求します という議論を聞いたから,というわけでもないのだが,「ヒロシマナガサキ」という,原爆をテーマにしたドキュメンタリーを観に行ってきた.

アカデミー賞ドキュメンタリー映画賞にも輝いた本作は,反核を訴える日系アメリカ人のスティーブン・オカザキ監督が,500人以上の被爆者に会い,実に25年をかけて完成させた渾身のドキュメンタリーである.

ナレーションなどは一切なく,解説も写真や絵を説明する必要最低限のテロップがあるだけ.14人の被爆者,原爆を投下した爆撃機の搭乗員,原爆の開発に携わった科学者などの証言が淡々と流れるというシンプルな構成だけに,妙な生々しさがあった.少なくとも,ドキュメンタリーにありがちな「ある特定のメッセージが最初からあって,作為的にそれを伝える」といった押しつけを感じることはなかった.

1つ1つのカットが非常に短く,ほんの数秒というシーンも多い.それだけに,まるでパズルのピースが散りばめられたようなフィルムであり,そこからどのような絵を完成させるかは,観た者1人1人に委ねられているのだろう.


以前,世界報道写真展を訪れた時に,こんなことを書いた.
Peace Pipe: 世界報道写真展 - 今ここで生まれた過去の歴史 [memo]

悲惨な歴史なんていうのは,それこそニュースにすらならないものも含めて,世界中にいくらでもある.ドキュメンタリー映画にしろ,今回の写真展にしろ,なぜそれをわざわざ伝えなければいけない? お金を払ってまで,なぜそれをわざわざ知りに行かなければいけない?

そもそも歴史なんていうものは,知らなければ存在しないことと同じなのだ.地球の時間の流れの中では事実として過去に起きた事象かもしれないが,それを知らなかった私という人間の中には存在しなかったものであり,それを知った時点で始めて誕生する「既に終わった過去」なのである.

だから歴史は,いつでも冷静で時として残酷だけど,同時に実はとても主観的でパーソナルなものだと思う.
--中略--
とうてい変えることなんてできない過去の事実が自分の中に誕生する瞬間と,その時に単に知識としてではなくそこから自分が感じる何かを探しに,きっと歴史に出会いに行くんだろうと.そんな気がします.


胸を圧迫する1つ1つの証言や,目を覆いたくなるような映像を見ながら,人間とはなんと脆い生き物だろうと思った.「アメリカ人が憎い」とかいう感情よりも,戦争という狂気にかられ,こんな悲劇を起こしてしまう人間の脆さが,ただ悲しかった.

これは原爆の話ではなく,「人間」のストーリーだ.


この映画は,11歳の時に終戦をむかえた母親と観たのだが,終わった後に彼女が

こんなものではとてもモノ足りない

と言ったのが忘れられない.

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2007年8月12日日曜日

Big Frog Summer Tour 2007 at SuperDeluxe [music]

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今日は SuperDeluxe で Big Frog の Summer Tour ライブでした.

ベースの Shimi さんはまだ復帰していないので,今日は Fig Brog 名義で,いつもと違ったスタイルのライブ.

なんと 1st set は,トンさん1人で1時間ずっとドラムソロ!
ドラムソロって…つまらないですよね,いつもそう思ってました.でもトンさんのドラムソロは,ちょっとヤバいぐらい最高でした.ドラム1人なのに,ストーリ性があって,はっきり言って1時間が短すぎると思ったぐらい.オーディエンスに一瞥も投げずに,ただひたむきにドラムを叩くトンさんは,もうめちゃめちゃカッコ良かった.

2nd set では,まずサトちゃんが1人でギターを持って弾き語り.その後ギターの Moccos さんとしばらく2人でやって,そして 前回の Yukotopia と同じように,3人でアコースティックっぽく.

全部カッコ良かったけど,特にシビれたのは Jimi Hendrix の Wait Until Tomorrow のカバー.サトちゃん,そんな声で歌ったら好きになっちゃうよ.

ニューアルバムの逸話や,ツアーの裏話を交えながら,とても心地良い音楽が SuperDeluxe の空気に溶け込んでいました.


こちらが今週発売された彼らのニューアルバム,Flow.

BIG FROG
価格
あまなつShopあまなつで見る同じレイアウトで作成

新曲あり,ライブでお馴染の曲あり,なにはともあれ祝セカンドアルバム.

SuperDeluxe を出て六本木を歩いているうちに,32歳になりましたとさ.


2007年8月11日土曜日

アメリカに原爆被害の賠償金を請求します - 太田光 [reflection]

夜中の4時を過ぎて,録画してあった昨日の 「太田光の私が総理大臣になったら…秘書田中。」 を少し見て寝ようと思ったら,最後まで見入ってしまい,そして胸がザワザワして寝れなくなったので,こうして今文章を書いている.


この日のマニフェストは,「アメリカに原爆被害の賠償金を請求します」というもの.

もちろん「賠償請求をしてカネをブン取ろう」なんてことが,太田の真意ではない.「原爆というものが,必然だったとしてはいけない」というメッセージであり,先日の久間前防衛大臣の「原爆はしょうがない」発言が発端となっている.

反対派には石破元防衛庁長官や,ケント・ギルバートを始めとする4人のアメリカ人,中国人の大学教授など.


原爆投下の1ヶ月前から空爆を停止した広島への原爆投下は,原子爆弾の威力を測定する為の「実験」だった可能性が高いということ.

徹底した言論統制で,都合の悪いことは一切国民に出さず,勝てないと分かっていた戦争を辞められなかった当時の日本という国.

ロバート・ジョセフ核不拡散担当特使の「原爆投下により戦争が終わり,何百万もの日本人の命を救った」という発言.

それはアメリカの歴史の教科書にもそう書いてあり,アメリカ人にとって普通の概念であるということ.

「科学者の立場から言えば,あんな爆弾を作ったら『使ってみたい』という誘惑には勝てない」「核は無くならない.無くなるとすればもっと安くて殺傷能力が高い科学兵器が作られた時」という,とある科学者の発言.

日本軍が中国に行った無差別爆撃の被害者は,広島・長崎の被害者よりもはるかに多く,日本はそれに対する被害者からの賠償を「時効」「国家無答責」として全部却下したという事実.

広島の被爆体験者が語る,当時の壮絶な状況.

「戦争は全て自衛戦争だ」「自衛の為の戦争も全部否定するべきだ」と主張し,いつものように顔を真っ赤にして自分の信念を怒鳴り散らす太田.


…1つ1つが,とても痛かった.


番組の途中,VTR のバックに流れていたのは,清志郎さんが日本語で歌う John Lennon の「イマジン」だった.

"Japanese Lyrics by K. Imawano" とクレジットされているこの曲の最後は,原曲には無い

ぼくらは薄着で笑っちゃう
あーあ,笑っちゃう

というフレーズが何度も繰り返される.

「ジョンがあれほど平和を訴えて,こんな素晴らしい曲を作ったのに,世界はまだ戦争をしている.見ろよ,あの防弾チョッキを着た連中を… ぼくは平和を信じているから,そんなものを着ることはないし,武器も権力もない薄着ではあるけれど,それを誇りに思ってるんだぜ? ヤツらとは対象に,平和を信じているぼくらは,薄着でホント笑っちゃうよ.あーあ,笑っちゃう…」と,清志郎さんは語っているんだと,少なくとも私は解釈している.これほどこの曲の本質を,語るフレーズは無いと思っている.


番組の中で,石破が太田に対して
「原爆に限らず,東京大空襲も,全て補償しなさいとおっしゃっておられる.そうすると,日本も多くの国に対して,いろんなことをやってきた.これを全部やり直そうということは,パンドラの箱を開けたような,もうメチャクチャな…」
と言い終わらないうちに,

開けましょうよ.
開けましょうよ.
開けないからダメなんだよ.

と座った目で言い放った太田が印象的だった.


人が人を殺すことも,人が自分を殺すことも,無くなればいいと思う.


Peace Pipe: 憲法九条を世界遺産に - 太田光 [book]


2007年8月6日月曜日

杜の都,仙台 [diary]

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この週末は,とある友人に招待して頂いて,フルキャストスタジアムに行ってきました.

なんと用意してくれていたのは,フルスタ名物「砂被り席」とプレミアムラウンジ.
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「砂被り席」というのは,バックネット裏の前のグラウンドを掘り下げて作られた半地下式の座席.キャッチャーがファウルフライを追いかけてくると,本当に砂をかぶるかもしれません.
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まるでベンチから試合を見ているような臨場感.すごい迫力です.キャッチャーと同じ目線でピッチャーの球筋が見えます.改めて,プロってすごいと思いました.
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一方,5階のプレミアムラウンジからは,まったく違う視点で観戦できました.上から見ると,フルキャストスタジアムは本当にきれいな球場です.
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試合展開も最高で,この日ばかりは楽天ファンになりきりました.本当にありがとうございました.


仙台ということで,牛タンを堪能したり.
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木の隙間から見る七夕祭りの花火は,とても美しく,そして儚く…
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私にとって初めての仙台は,とても良い想い出になりましたが,でも最後まで気になったのは,市内にあったこのビル.
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モロて…


2007年8月2日木曜日

Big Frog Spring to Summer '07 live at Yukotopia [music]

昨日は久々に Big Frog のライブでした.

そして昨日は Grateful Dead のカリスマ,Jerry Garcia の誕生日.しかもライブハウスは東京のデッドヘッドランド,Yukotopia ということで,ライブの 2nd set は Dead set!

MC でサトちゃんが何気なく言った,

ジェリーがこの世に生まれてくれてありがとう

という言葉にグッときてしまいました.

ベースの Shimi さんはまだギプスをしている状態なので,昨日はベースレスのアコースティックセッション.聴き慣れた曲をアコースティックで聴くのも新鮮だったし,バンドの音もしっとり響いていた気がします.

だから余計にそう感じたのかもしれないけど,手クセ1つでガラっと雰囲気を変えるトンさんのドラムは本当にすごいな,と.Moccos さんのギターはあいかわらず心地良いし,サトちゃんのボーカルは…彼女の歌声は,ホント広がるし開きます.いまだに耳から離れないよ.

その全てが合わさった音の塊が,体にしみ渡った夜.

川の中で苔むす石のように
なるようになるさ
君の選ぶ道を
信じていいのさ

-- Flow / Big Frog


いろんな意味で,忘れられないライブでした.