2007年7月29日日曜日

のら犬にさえなれないダミ声の美しさ [music]

例えば Gatemouth Brown みたいな (この場合,Jeff Beck でも Jimi Hendrix でもいいけど),もう「芸術」としか言えないようなギターを聴いた後に,無性にハリーの声とギターが聴きたくなることがある.

2000年10月29日,「永遠なんてありえない」という言葉を残して解散した The Street Sliders.それは1つの歴史の終焉だった.

蘭丸は,きっと器用にやっていくだろうと思った.
(さすがに「新堂本兄弟」のバックバンドでギターを弾いているのにはひいたが…)

ハリーは,スライダースの他に,何ができるんだろうと思った.


お世辞にも,上手いとは言えないダミ声のボーカル.
音程もなにもあったもんじゃない.

そして決してテクニシャンではない,ヘタウマの,でもどうしても心に響くギター.

ボーカリストのハリーを,私はむしろギタリストとして評価している.ハリーのギターをはじめて聴いた時,頭によぎったのは Keith Richards だった.でも聴けば聴くほど,これこそハリーのギターだって思ったよ.

「のら犬にさえなれない」のハリーのギターソロこそ,ハリーのギターだと思う.普通2人でギターソロをまわすなら,展開としてはリズムギターが弾いた後,リードギターが弾きまくってキメて終わるってもんだろう.でもこの曲の,蘭丸がキザに弾いたあとの,ハリーの,全然難しくない,でも世界中でハリーにしか弾けないギターソロ.

このハリーの,チンケなギターとボーカルが,時として Gatemouth や Hendrix を凌ぐんだよ.俺にとっては,どっちも一流なんだよ.


男から見て,カッコいいと思う男.
あまりに破滅的な,擦り切れるようなその生き方.
廃れた,ボロボロの顔.
このけだるさ.ふてぶてしさ.
とても「健全」なんていう言葉は,どうしたって辞書に載っていない風貌.

彼が身代わりになってくれたと,勝手に思い込んでいた.
ハリーを見てるだけで,泣けてくる.


空は晴れてるのに,雨が降ってるのさ
Baby, Baby 教えてくれ
こんなことってあるのかい?

傘の中からじっと,雨を見てたのさ
Baby, Baby いつからこんな
へんなクセついたのさ?

道化師たちが,化粧を落として
パントマイムで,どこかへ脱け出した
そんなことどうでも,いいことだったのに

Baby のら犬にさえなれないぜ

-- のら犬にさえなれない / The Street Sliders


いろいろな場面が,いろいろな曲の中に眠っています.
この曲を聴くと,どうしても思い出すことがあります.

スライダースを聴くと,ハリーのヘッタクソな歌とギターを聴くと,今でもあの泣きたい気持ちを思い出すよ.


2007年7月28日土曜日

ありがと [reflection]

なんとか,やっていけそうな気がするよ.


2007年7月26日木曜日

Road to CEO - Google 村上憲郎 [seminar]

リクルートエグゼクティブエージェントが主催し,今回で20回目となる "Road to CEO" という無料イベント.今回のゲストスピーカーは Google 副社長兼,Google Japan 代表取締役社長の村上憲郎氏ということで,足を運んでみました.
第20回 グーグル株式会社 代表取締役社長 村上憲郎氏

このイベントは,

次代を担う経営者予備軍に当る、30代を中心とするビジネスリーダーの皆様を毎回、オーディエンスとしてお迎えし開催しております。

オーディエンス対象
現在30代〜40代前半で、将来プロフェッショナル経営者を志向されている以下の方々
・事業リーダー、経営企画リーダーで、特にWEBビジネスを手掛けていらっしゃる方
・コンサルティングファーム出身者、もしくは在籍中で事業会社の中枢ポジションへの転身を目指している方

とのことで,会場もスーツを着た方がほとんどだったように思う.

個人的には,Google トップの話が聞けるというのもあったが,これからの仕事の絡みもあって,トップマネージメントや成功体験を勝ち得た人の話から,なにかしらのヒントをつかみたいという思いがあった.

また,このようなイベントでは常にスピーカーのプレゼン技術にも注目する.今回は「トークセッション」の名の通り,プレゼンというよりは,ファシリテーター2人が村上氏に質問をしていく形式だったが,村上氏の public speaking スキルとしては「普通」だったように思う.話すリズムやテンポは一定で,1点を見つめて話し,ホストやオーディエンスともアイコンタクトを取らない (さすがに Q&A セッションでは質問者の方を見ていたが).

質問に対してすぐに答えを言わず,経緯や前置きを存分に話した後にやっと本題に触れることが多く,個人的には若干まわりくどく感じた.Yes/No で答えられる質問もしばらく背景を話した後に答えたり,最後まで元々の質問に回答せずに話が終わったこともあった.

以下,印象に残った発言をいくつかピックアップしておきます.



- なぜ初代日本法人社長が村上氏に決まったか

英語ができて,コンピュータができて,マネージメントができる人間が探されていた.

粒揃いの若者が集まっている technology oriented の会社をリードし,respect を勝ち取ることができ,テクノロジーに対する洞察力を持っていなければならない.

Eric Schmidt (Google CEO) に「でも私は最近のプログラミングは分からないよ」と言ったら「お前なら分かったふりができる」と言われた.


- Page と Brin について

知力に支えられたとんがり具合がある.

あまり多くを語らない (特に Larry Page).

それぞれスタイルは違うが,テクノロジーに対する洞察力・勘の良さはすごい.


- 当時の Google の日本に対する興味

Google は matrix organization を取っており,機能 (縦軸) と 地域 (横軸) で組織が構成されている.

地域は North America (アメリカ・カナダ),Europe/Middle East/Africa,Japan,Rest of the world の4つ.

つまり日本だけがシングルカントリーであり,経済的にも文化的にも非常にユニークな地域として認識されていた.

言語的特徴だけではなく,多くのタレントがいるという意味でも注目されている.


- Yahoo について

よく Yahoo と競合していると言われるが,その概念は希薄 (「競合していない」と言うと嘘になるから否定もしないが…).

ビジネスモデルとしては対局にある.

Web page の人気度を,page view ではなく「滞在時間」で計った統計があるが,Google は「情報を指し示す」ことが使命であり,目標は滞在時間0.

その統計によると,Yahoo が1位.
Google は22位だからまだ我々は良い仕事をしていない.滞在時間で Google は最下位にならなければいけない.


- 人工知能に対する興味はいつから?

「2001年宇宙の旅」を見てから.


- 経営者としてのスタート

30歳で DEC に転職した時,エンジニアではなく営業として入った.

実際には,本屋で「男を磨くのはセールスだ」という本を見たからという安直な理由だが,エンジニアとしてだけでは視野が狭くなる.


- 違う分野に入り込んだ時に身につけるスピード感

日立電子時代,それぞれの専門分野に話を聞きに行き,それを仕様書にまとめなければいけなかった.

内容を理解する為に,その日の帰りに本屋でその分野に関する「一番薄い本」を探し,一晩で読んでなんとか内容を理解していた.

その時身についた技術は,
(1) 薄い本を見つける技術
(2) 速読
(3) 分からないものはそのままにしといて,分かったところだけを繋ぎ合わせてでっちあげる技術

実はこれで大体は外れない.
「つまりこういことに違いない」と大胆不敵に思い込むこと.


- Google で「つまりこういうことだろう」と言うのは大変では?

仮定として間違っている.

Google ではそれぞれの分野で,「下手するとこいつ以上のやつは世界にいない」という人間が集まっている.

その人間以上のアウトプットを期待するのは間違っている.基本的に組織はフラット.

スーパーバイザーがなにかを指示しているという感じはない.あまりマネージメントという概念はない.


- では Google におけるマネージメントとは?

先ほどの matrix organization が,塊として整合性を持っているかというチェック機能.

マネージメントというよりもチェック.

外資の日本法人を預る立場としては,Google に限らずそういう側面が強い.


- 英語について

ひたすら英語をやりなさい.

英語「を」勉強したらだめ.
英語「で」勉強しなさい.

大学に入る前の若い人には「これからは英語ができないと何もできない」といつも話している.


- Google の PR 戦略は?

特殊なことはやっていない.
広報として伝えたいこと,記者の興味があることを,的確に地道にやっているだけ.


- Googlezon (Google と Amazon が合併して世界を席巻するのでは,という憶測) についてはどう思う?

まったくのお笑い,ヨタ話.

いろんな流行語が飛びかっている.
"Web 2.0" はもう古いの?
「Google はあちら側」とか言われて,「なんだもう死んじゃったのか」と思った (笑).

我々は,そういう話からは意識的に距離を置いている.

我々のビジネスモデルは非常にシンプル.
世界のあらゆる情報をインデックス化して情報のありかにブリッジすること *しか* やっていない.

この使命を成し遂げるには,200年ぐらいかかると思っている.

Web 2.0 だかなんだか知らないが,Web 3.0 でも Web 200 でも,どんな言葉で言われようと,ひたすらこのミッションを全うしていくだけ.

情報もコンテンツも,所有も占有もしない.
Googlezon なんてありえない.
シンプルに検索をしていく,それしか見えていない.


- 無償のポリシーについて

Google のサービスは無償で提供する.

どうやったら金儲けに繋がるかと考えた瞬間に,サービスが本質からねじれてくる.

自分の友達・家族・コミュニティに喜んでもらえることだけを考えて作る.

だから財務的には広告収入 (シンプルかつ情報としても有益) に力を入れている.


- どんな部下であれば評価したり出世させたいと思うか

それぞれのところで delegation (委任) させたい.

担当しているところでは,その人が一番詳しく知っていなければいけない.

「『どうしましょう?』ということだけは言うな」と言っている.自分以外にこの問題を解決できる人間はいないと思わなければいけない.

困った時は上げれば良いが,せめて案をいくつか持ってくること.A 案・B 案・C 案と持ってきたら「君ならどれがいいの?」と聞く.そいつが「うーん,多分 A 案」と言ったら迷わず A 案を選択する.例えそれが間違っていても,それが会社の実力.そして「責任は2人で取ろうね」と言う (「お前が責任を取れ」とも「俺が責任を取る」とも言わない).


- Google でもタレントマネージメントが必要か

Google はタレントの塊.
あるとしたら,フェアネスを強調していくこと.ゴールを,本人・会社双方の目標として決める.

もう1つは,その中でも秀でた成果に対してアワードを与える仕組みを作り,祝福してやること.


- 経営者という観点で,重要だと思っている要素

仕事をやりやすくすることが私の仕事.そういう環境・文化を作ること.

いつかは自分の部下の中から,将来の外資系の社長を輩出したい.


- 5年後10年後に経営者として育てたい人材のどこを見ているか

向上心があること.自己啓発をする人間.

明らかに「成長」している人間.
四半期ごとに,明らかに脱皮している人間というのがどうしてもいる.


- Google が発見した10の事実 の10番目,「すばらしい、では足りない。」について詳しく

自戒しないと天狗になる.

Google のサービスには,いつまでも beta とついている.

いつまでも「まだだ」と思っている.

いつまでもユーザーの声を求め続けたい.


- 経営者として,継続的に利益を出しながらサービスを出すコツ

特別な Google 流の秘策はない.

マーケット・コンペティターの動向を見て,ニーズを分析すること.


2007年7月23日月曜日

1 Giant Leap [movie]


世界20カ国・25個所の,様々なミュージシャン・思想家・アーティスト・作家・役者・科学者などとのコラボレーションで作られた "visual album" ドキュメンタリー.

そのテーマはずばり「人間」だ.

まるで自分の体をナイフで切り刻み,流れている真っ赤な血を見せつけるような,そんなフィルムだと思った.社会の中で生活していく上で,普段は隠していたり出てこない人間の本性と,向きあわざるを得ないのだ.

このフィルムは,

time
masks
money
confrontation
god
inspiration
sex
death
happy

という,9つの人間の本質とも言えるテーマについて,音楽と映像とメッセージで強烈に語りかけてくる.そのどれもが,心に突き刺さってくる.本当に痛いのだ.

観ているうちに,だんだん体が熱くなってきた.
観終わった後は,なんとも言えない爽快感と共に,思いきり叫びたい気分だった.そして,音楽に対する感謝の気持ちがどうしようもなく込みあげてきた.

働くことはいい.金を稼ぐことはいい.
でも人間として,もっとこの地球や宇宙と関係を持つ意味を考える時間を持とうと思った.

私達には,周囲から与えられたり押しつけられた価値観が表面にあって,世の中それを目安に物事が計られている.でもその表面を壊して,実は自分の肉体と精神と宇宙が全部繋がっていることを感じ取った時に,始めて自分と向きあえるのかもしれない.そうして自分と素直に向きあって,始めて他人とも向きあえるのかもしれない.

Unity in diversity -
All is one.

溢れんばかりの,とてつもない「人間」と「音楽」のパワーを観てほしい.
できれば英語字幕をオンにして,一言一言を噛み締めながら観てほしい.英語が得意じゃない方は,英語が分かる人にこの DVD を渡して一緒に共有しなきゃだめだ.

音楽を愛する人に.
そして,全ての「人間」に.

Peace to ya all.


2007年7月14日土曜日

はじめてだから…どうしたの? [memo]

あのね,一応プロとして働いて,それで飯食ってるんだったら,はじめての仕事した時に「はじめてだから」とか「ここの経験ないので」とか「ここあまり詳しくないんで」とか言わない方がいいと思うよ.

研修でも受けに来たつもりですか?
そんな言い訳がまかり通るなら,新しいものなんか一生出てこないと思うよ.

経験の無いところで,いかに成果を出すかが,腕の見せどころなんじゃないのかよ.


2007年7月12日木曜日

Right as Rain - Gia Ciambotti [music]


友人から「好きなはず」と言われて紹介されたのが,この Gia Ciambotti という女性アーティスト.MySpace で視聴してみたところ,「はいキタコレ!」って感じだったので,すぐアルバムを購入してしまいました.

ぜひアルバムタイトル曲の "Right as Rain" を聴いてみてほしい.色気のある乾いた声で,なんとも硬派な雰囲気を作り上げている.
http://www.myspace.com/giaciambotti

心地良いリズムとソウルフルな歌声がしばらく続いて,ハッとするのはアルバムの最後に収録されている Otis Redding の名曲, "That's How Strong My Love Is" のカバーだ.初期の The Rolling Stones を始め多くのアーティストにカバーされ,いろんなバージョンを聴いているが,女性ボーカリストの声で聴くのは始めてだった.

「もし僕が遥か彼方の太陽だったら
 この愛と一緒にどこへでも行くよ
 太陽が沈んだら月になるんだ
 僕が君のそばにいることを教えてあげられるように」

…と歌うこの甘いラブソングを,女性の,しかも彼女のような声で聴くのが,なんとも新鮮だった.っていうかメチャクチャかっこいい.

ところでこのアルバムは彼女のデビュー作だが,どう聴いても「デビューしたての新人」の音ではないと思ったら,実は結構な経歴の持ち主のようだ.
橋下駄の音: [購入物]Ciambotti

かつてのLucinda Williamsバンドのベース奏者Dr. John Ciambottiの愛娘Giaのソロデビュー作。活動歴は意外と古く80年代にA&Mからガールズポップグループの一員としてデビューしていたり、スプリングスティーンの『MTV Plugged』を筆頭に、調べてみるとコーラスとしての参加作品の意外な多さに驚く(最近ではLucinda Williamsの『West』にもバックヴォーカルで参加)。

Bobby Joyner のファーストアルバムでは,あの The Mother Station の Susan Marshall と共にコーラスをつとめたこともあるのだとか.


余談になるけど,旅に新しい音楽を持って行くと,後で聴き返した時に旅先で見たものや感じたことを思い出すじゃないですか.それでちょうどアメリカに行く予定があって,好きそうで聴いたことがない音楽を探していた時に,このアルバムをタイムリーに紹介してもらった.先週まで行っていた Pittsburgh - Boston - San Diego - San Francisco では,このアルバムをメインに聴いていました.

というわけでこのアルバムは,私的には「2007年夏のアメリカの想い出」だったりします.

Gia Ciambotti
価格
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2007年7月7日土曜日

アメリカ最後の夜に触れた感性 [diary]

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アメリカ最後の夜は,こちらに住む旧友と再会することができた.

彼は去年まで東京で働いていたものの,「やっぱり俺にはアートだ!」と思ったらしく,今はここ San Francisco でデザインの勉強をしている.

自分の夢を,がむしゃらに追いかけている人間だ.


これは彼のペインティング.思わず目の前にして立ちすくんでしまった.
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これは動物園に行った時に感じたことを表現したものらしい.
自然にいるはずの動物が動物園で消費されているというコンシューマリズムを,体に OREO クッキーというプロダクトを使って表現したシマウマ.動物を通して会話をする親子の手形を体に無数につけた,メディアとしての動物を表現した羊.2体とも表情が凄まじい.
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自分で曲をかいて CD を制作したり,
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他にもムービーを作ったり,写真を撮ったり,建築をしたりと,とにかくあらゆる形でその溢れんばかりの感性を表現している.

体のどこを切っても,クリエイターの血が流れているのだろう.

人間が気持ちよく感じるってどういうことだと思う?
なんかそれを表現したいんだよね

と,目をキラキラさせて言うのだ.


今回のアメリカ出張は,Pittsburgh で CMU/SEI を訪問したり,9年ぶりに Boston に帰ったり,San Diego でとても内容の濃い2日間を過ごしたり,San Francisco で独立記念日を向かえたり,Google Headquarter を訪ずれたりと,非常に刺激的なことばかりだったが,最後の夜に触れた彼のナイフのような感性が一番刺激的だったような気がするよ.


2007年7月5日木曜日

Summer of Love から 40年経った Haight-Ashbury で [diary]

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San Diego を発ち San Francisco に到着.
今日こちらは独立記念日で1日オフだったので,Haight-Ashbury をぶらついていた.

Haight-Ashbury は,1960年代のヒッピーカルチャー発祥の地として知られる場所である.かつては数十万人ものフラワーチルドレンが集まり,Jerry Garcia が駆け抜け,Janis Joplin が女王となった地だ.

私自身,Haight-Ashbury には何度か来たことがあって,始めて訪れた時には少しばかり感動して,Buena Vista Park の芝生に寝そべって Janis を聴きながら浸ったものだが,なぜか今ではびっくりするぐらいこの場所に感動を覚えない.

事実,今日も私はまるで下北沢か高円寺にでも出かけるような感覚で,ここにたくさん連なる古着屋とレコード屋を目当てに行くだけだった.

何度目かの訪問で「慣れてしまった」と言ってしまえばそれまでだが,それでも当時のルネッサンスの狂気が少しでも残っていれば,何度来ても慣れることは無いと思うのだ.

確かに今でもここにはヒッピー崩れがたむろし,ストリートの雰囲気も当時の面影が少しは残っているのだろう.

だが Summer of Love から40年経った今,私にとっては半ば観光地に成り下がった Haight-Ashbury よりも,松本人志の「荒城の月」の方がよっぽどアナーキーに感じるよ.


2007年7月4日水曜日

San Diego で聴く The Crystal Ship [music]

Boston から一路西海岸へ.今日まで San Diego に滞在していました.

こちらの時間では,ちょうど7月3日が終わるところ.
毎年この日には思い出すことがあって,去年はこんなことを書いた.
Peace Pipe: 真の Rolling Stone が花になった日 [music]

今日,7月3日は Brian Jones と Jim Morrison の命日.2人とも個人的に思い入れが強く,特に Jim Morrison は単にミュージシャンというレベルを超えて私の人格形成に大きな影響を与えたと言って過言では無いが,まずはこのエントリーでは Brian のことを書いてみたいと思う.
--中略--
Brian が死んだ2年後の同じ日に,Jim Morrison は Brian と同じく水の中で死んだ.次回は Jim Morrison のことを書きます (たぶん).

結局あの後,Jim のことは書かなかった.というか,途中まで書いてやめた.今日その続きを書こうと思ったが,やはり言葉にしきれないものがある.


ただ,Jim がいた Venice Beach から車でほんの2時間程度のここ San Diego で,そして南カリフォルニアの病的に陽気な空の下で,The Doors の The Crystal Ship なんかを聴くと,なんともたまらない気持ちになるんですね.

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Before you slip into unconsciousness
I'd like to have another kiss
Another flashing chance at bliss
Another kiss, another kiss

The days are bright and filled with pain
Enclose me in your gentle rain
The time you ran was too insane
We'll meet again, we'll meet again

Oh tell me where your freedom lies
The streets are fields that never die
Deliver me from reasons why
You'd rather cry, I'd rather fly

The crystal ship is being filled
A thousand girls, a thousand thrills
A million ways to spend your time
When we get back, I'll drop a line

-- The Crystal Ship / Jim Morrison



iPhone を触ってみました [ce]

先週末,アメリカではとうとう iPhone が発売され,たまたま入ったレストランで持っている人を発見した.
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少し見せてもらっているうちに,無性に自分でもあれこれ触ってみたくなり,さっそく次の日に Apple Store へ.
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率直な感想としては,さすが Apple といったところ.
各々の機能に目新しいものは無いのに,デバイストータルとして独自の世界を築き上げている.

スタイラスなどではなく,Jobs の言葉を借りれば「世界最高のポインティングデバイス」である「指」を使った操作で完結し,"pinch" に代表される直感的なインターフェースの1つ1つが心を踊らせ,まさに「電源を入れたくなる gadget」だった.

ちなみに "pinch" ってのはこんな感じです.



なにより,実際に触ってみて改めてすごいと思ったのは,本体にボタンがたった1つしか無いことだ.まわりを見渡せば,PDA もケータイもとにかくボタンだらけなのに対して,iPhone は「必要な時に必要なボタンだけを画面上に表示し,ソフトウェアキーボードで GUI 操作する」というポリシー.

つまりユーザーからモード管理の概念を一切奪っているのだ.

「どんな時でもできること」は「メニューに戻ること」だけだから,本体にはその為のボタンが1つあるだけ.このこだわりが,なんとも素晴らしい.

例えばケータイの,1つのボタンに複数の機能を割り当て,ボタン長押しや有効モード表示で使い分けるといったアプローチが,そもそも間違った方向性の上での工夫を施しているようにさえ思えてしまった.


ところで,APPLE LINKAGE によると,

iPhoneをアクティベートする際に、ソーシャルセキュリティナンバーを「999-99-9999」で入力し、45ドルのプリペイドプラン「Pick Your Plan」を選択します。これでSIMカードを抜くと、Wi-FiとiPodの機能のみを利用できるとのことです。また、alexking.orgでは、iPhoneの契約を解約してもWi-FiとiPodの機能を利用できていると伝えています。175ドルの契約中途解除料は、30日以内の解約であれば支払う必要は無く、3日以内に解約すれば、アクティベーション料が返金されるとのことです。

とのこと.

うーん,買っちゃえば良かったかな…


2007年7月2日月曜日

9年ぶりの故郷 Boston [diary]

Pittsburgh での日程を無事終えたわけですが,そこからの飛行機は Boston 経由のものを探し,さらにトランジットの時間を24時間に設定して,私が大学時代を過ごした Boston に1日だけ滞在することにしました.

この日は,行きつけだった古着屋に行ったり,一緒に来ている後輩に Boston の街を案内したり,Red Sox のゲームを観戦したり…

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この地に帰ってくるのは9年ぶり.
街並や人や空気や匂いに触れて,昔の記憶が濁流のように押し寄せてきます.

懐しすぎて,吐きそうです.



2007年7月1日日曜日

脳をフルに刺激した Pittsburgh [diary]

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ここ3日ほど,Carnegie Mellon University (MIT や Stanford と並ぶ Computer Science の名門・Computer Science 部門では2007年全米大学ランキング1位) と,Software Engineering Institute (ソフトウェアに関する最も権威のある研究機関の1つ・CMM やプロダクトラインの開発などが有名) を訪れていた.

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SEI で,この Blog で何度も紹介している Software Architecture in Practice の著者の1人である Len Bass と話した時のエピソードを1つ紹介しましょう.

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この本は「アーキテクトのバイブル」とされ,SWEBOK (Software Engineering Body of Knowledge) でも推奨されているが,Business Quality (Chapter 4),Attribute Driven Design (Chapter 7),「Architectural Drivers は10を超えてはいけない」というバカげた定義 (Chapter 7) あたりに懐疑的な内容も多い為,Bass に

ぶっちゃけ,本を書く時にでっちあげることあるでしょ?

と冗談半分に聞いてみた.

彼曰く,

頭の中にあるコンセプトは感覚的なものが多い.
それを,トップレベルのものから順に言葉に落とし込んで本を書く.

その過程で,分かりにくくなったり,直感的な表現でなくなったりするものがあることは否めない.

…みたいな御託をしばらく並べた後,「うーん,ま,そういうこと (でっちあげること) もあるかもね」と冗談半分に笑っていました.

さらに同席していた Felix Bachman (Documenting Software Architectures の著者の1人) が,Architectural Drivers の定義について,すかさず

そもそもこの概念は ATAM から来ており,人に3 - 4ページで説明する時にはこれぐらいに落とし込まなければいけない.

要は粒度の問題.

システムを分割していくと,「スケール」という概念は無くなるでしょう?

機械で全て自動化をしない限り (人間が関わる限り),数の制限は必要.

とフォローを入れつつも,最後に「うーん,ま,そういうこと (でっちあげること) もあるかもね」と同じように笑って言ったのが印象に残っている.


David Garlan (Software Architecture: Perspectives on an Emerging Discipline の著者の1人) が,「アーキテクトが成長する為には経験 (とそれに基く知識) と,外部からの刺激 (例えば教育など) の2つが不可欠だ」と話してくれたが,本当に脳がフルに刺激された3日間だった.

今まで本の中でしか知らなかった CMU の教授や SEI の研究者に会って,最初はどんな化け物が出てくるかと思っていたが,彼等が生身の人間だということも良く分かった.


最終日は,地元 Pittsburgh Pirates のゲームを観戦.残念ながら桑田は投げなかったが,試合は9回裏サヨナラ勝ちで大盛り上がりし, Pittsburgh を締めくくるのにふさわしい夜でした.
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