2007年2月14日水曜日

Google の TV に対するアプローチの真意は? [ce]

日本ではあまり話題になっていないが,海外では最近の Vincent Dureau 氏の発言が話題を集めているようだ.
Google and cable firms warn of risks from Web TV - Reuters.com

Google で "Head of TV Technology" という肩書きを持つ Dureau 氏は,OpenTV の CTO という立場から去年 Google に移籍し,去年末の「デジタル・テレビの新たな挑戦」 でも来日講演していた人.

この記事は,「YouTube などの動画配信サービスが,ネットワークを破壊しかねない」と警鐘を鳴らしている.1時間のビデオ試聴に必要なデータは1年分の e-mail に相当し,現状のインターネット上り回線のトラフィックの60%は peer-to-peer で,そのほとんどが動画であるとのことだ.

そして議論の中心は,(YouTube を買収した) Google の,TV のヘッドである Dureau 氏が,「インターネットは TV の為にデザインされたものではない」と発言したことである.

The Web infrastructure, and even Google's (infrastructure) doesn't scale. It's not going to offer the quality of service that consumers expect

(ウェブのインフラは,例え Google が持つインフラを使っても,スケールするものではない.ユーザーの期待を満たせるだけのクオリティは出せないと考える.)


さらに,とある (Google に TVビジネスの利益まで支配されると懸念していた) ケーブル会社の経営者が「Google がビデオをスケールできないなんて最高のニュースだ」と語ったというエピソードまで紹介されている.

USA TODAYPC MagazineCNET なども同様の報道をしているし,Google の主張に懐疑的な 記事 や,「数々のビジネスを破壊してきたインターネットが,その限界にきている」としている 記事 なども見受けられる.


…と,実はここまでは前置きで,本当に興味深いのは以下の記事だ.
GigaOM >> Google: Web is OK for TV (despite what you may have read)
「Google 曰く Web は TV に問題ない (あなたが何を読んだかしらないけど)」というタイトル (意訳) がつけられたこちらの記事は,世間の報道は Google が言うことを真に受けすぎだと忠告している.

この筆者が他の Google 社員に裏を取った結果,「Dureau 氏の発言はその文脈を無視して報道されており,この発言はたまたまケーブルセットトップボックスと Google 間のインフラについてのボトルネックの可能性を質問された回答として語ったもので,現実には Google のインフラは問題無くスケールするし,web で TV を見ることにもまったく問題は無い」とのことだった.

そして筆者は,この発言はむしろ「(ケーブル会社のせいで) Google が家庭まで手を延ばせないからスケールできない」という主張を語ったのではないか,と予想している.

筆者も Dureau 氏の発言を直接聞いたわけではなく,これ以上は想像の域を超えないと認めているが,まともに捉えるにはあまりに Google らしくない発言だとしている.


この記事のコメント欄にもあるが,TV 放映がブロードキャストであるのに対して,インターネットの動画配信がユニキャストであるのは事実.Google がそのインフラを活かして,Google のサーバー経由でケーブルを取り込みたい意図はあるのかもしれない.


いずれにしても,Google だけでなく,Microsoft や Apple,Yahoo など,数々のインターネット・PC 企業が,それぞれのアプローチで TV の座を狙っていることは間違いない.もちろん,これまでその位置を占めていた家電メーカーも黙ってはいない.これから,これらの企業間でどんな凌ぎ合いがあるのだろうか.我々の10年後のリビングルームは,ライフスタイルは,どんなものになっていることだろうか.


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