2006年2月13日月曜日

Susan Marshall が動いた!! [music]


2004年に開催された「Return to Sin City」という Gram Parsons のトリビュートコンサート.
Gram Parsons とはカントリーとロックを融合させ,The Rolling Stones や Bob Dylan を始め60年代の音楽シーンに絶大な影響力を与えつつも,1973年に26歳という若さでこの世を去った偉大なミュージシャンである.実際,この頃の Stones のアルバム (Beggar's Banquet から Let It Bleed, Sticky Fingers, Exile On Main Street ぐらいまで) にはまじまじと Gram の影響が感じられるし,最近では The Black Crowes も (ってもう最近とは言わないか) しょっちゅうライブで Gram の曲をカバーしていた.

元々この DVD は,大好きな Gram のトリビュートコンサートに,大好きな Keith Richards が参加しているということで目にとまった.セットリストを見ていて,「"SHE" (私が一番好きな Gram の曲) を Norah Jones がやったのかぁ.ちゃんと歌い上げきれるのかねぇ?」とか,「"Wild Horses" (Stones が Gram に捧げた曲) を最後に全員で演ったのかぁ.なんてありがちな展開なんだ…」とか思っている最中,思わず叫んでしまった.

目に飛び込んできたのは "Susan Marshall" という文字.あの The Mother Station のボーカリストが,Dan Penn (これまた私が大好きなミュージシャン) の Do Right Woman, Do Right Man を演っていた.

Mother Station というバンド,Post-War・Modern ブルースや,60年代のクラシックロックに激しく傾向する私にとって,90年代を救ってくれた数少ないバンドの1つであり,私が感じる「カッコイイ」の全てが凝縮されたバンドだった.

Mother Station について書くのは,今はやめよう.何ページ書いたってこのバンドに対する想いは尽きないし,書き手が一方的に興奮した文章は,読み手をしらけさせるだけだろう.

ただ1つ,この動いている Susan Marshall を見て感じたのは,この時点でもう Brand New Bag という Mother Station が唯一リリースしたアルバムから10年も経っているということ.10年といえば,71年の Sticky Fingers で Wild Horses を歌い,鳥肌が立つようなカッコよさを備えていた Mick Jagger が,81年の Let's Spend The Night Together の映画ではフットボールパンツ姿になっている時間である (我ながらなんて分かりやすい表現だろう.[music] のエントリーを読んでくれている人には,「インターネットが一般に広まった95年から『Web2.0』なんて言葉が聞かれ始めた2005年」なんてくだりよりもよっぽどピンとくるはずだ).画面に映った Susan は,「あれ? どこのディナーショーから抜け出してきたオバチャン?」という,Brand New Bag のジャケからは変わり果てた風貌.どうせならとことん幻滅させてくれればいいのに,あの魂をゆさぶるような声はやっぱり Susan のままで,夢にまで見たその全身全霊を絞り出すような歌い方を,まさに目の前で映像として見ているのだ.そんな私にできることは,1994年に Gwin Spencer と Memphis の1ローカルバンドとして演っていた Mother Station というバンドに思いを馳せることと,Mother Station はもうどこにもなく,私の中の永遠の幻であり夢であるということの再認識.今思えば,「一体何を期待していたんだろう?」と思う.DVD を見る前の興奮とは裏腹に,とても切ない気分に浸る日曜の夜だった.

You can't put your arms around a memory
-- Johnny Thunders


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